研究課題
令和2年度は、目標特性を達成した合金に対して特性発現メカニズムに対する微細組織の影響を調査し、高強度高成形性マグネシウム合金の開発指針を提案した。前年度に、溶体化処理後、エリクセン値にして8.2 mmの室温成形性を発現し、ピーク硬さまでの時効処理により235 MPaの0.2%耐力を発現するMg-1.2Al-0.5Ca-0.4Mn-1.6Zn (AXMZ1002)合金を開発した。この合金の優れた室温成形性は、マグネシウムの底面が板幅方向に配向し、底面の板厚(TD)方向への配向度が低下したことに起因する。こうした組織の形成の原因を溶体化処理初期の組織を透過EBSD解析により調査すると、Zn添加に伴い、双晶界面にTD方向に配向した結晶粒が形成、成長し、TD配向した集合組織が形成することが明らかとなった。また、AXMZ1002合金溶体化処理材に室温での成形加工を模して2%の引張ひずみを導入後、170℃で20分の時効処理を行い、再び引張試験を行ってベークハード性を調査すると、235MPaの0.2%耐力が得られた。そこで、Mg-Ca-Zn-Al系合金に対して、各溶質元素の組成を0.3-0.7at.%の範囲で系統的に変化させ、170℃で20分の時効処理における転位偏析挙動をシミュレートし、強化の要因について検討した。転位のすべり方向の最大せん断応力を転位の固着力と定義し偏析量との関係を調査した結果、Ca、Zn、Alの順に偏析量が転位の固着力に及ぼす影響が大きいことを明らかにした。また、転位位置の変化と弾性エネルギー変化の関係を解析し、本研究で定義した転位の固着力が転位に働く力と相関することを確認した。以上の結果から、優れた室温成形性、大きなベークハード性を発現させるには、G.P.ゾーンの析出により強化されるMg-Ca-Zn系合金を軸とした合金開発を進めることが有望であると言える。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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