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2019 年度 実績報告書

金属板材せん断部の微視組織情報とFEM解析による2次破壊機構の究明

研究課題

研究課題/領域番号 18H01757
研究機関国立研究開発法人理化学研究所

研究代表者

高村 正人  国立研究開発法人理化学研究所, 光量子工学研究センター, 上級研究員 (00525595)

研究分担者 松野 崇  鳥取大学, 工学研究科, 准教授 (30781687)
浜 孝之  京都大学, エネルギー科学研究科, 准教授 (10386633)
箱山 智之  岐阜大学, 工学部, 助教 (20799720)
北條 智彦  東北大学, 金属材料研究所, 助教 (50442463)
研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワード高張力鋼板 / せん断加工 / 残留応力 / 拡散性水素 / 遅れ破壊 / 陰極チャージ / 有限要素法
研究実績の概要

高張力鋼板を用いて、打抜き破面性状が破面の2次的な破壊に及ぼす影響を調査する実験を進めた。
面内曲げに用いる試験片として、中央部にせん断加工(クリアランス10 %tにおけるφ10 mmの穴抜き。ここで、%tは板厚に対する割合を示す)によって設けた切り欠きを有しており、この切り欠きが曲げ外となるように曲げが加えられる構造となっている。事前に有限要素法シミュレーションによって錘重量と切り口の周方向応力増分との関係を見積もり、これを用いて錘重量を負荷応力へ換算した。供試材には1180MPa級の冷延鋼板JSC1180Y(1.2 mm厚)を用いた。遅れ破壊の評価には、昨年度の報告で示した曲げ試験機を用いた。本試験機は、チオシアン酸アンモニウム水溶液中で陰極チャージをしながら同時に面内曲げ負荷を行うものとなる。24時間を上限とし、遅れ破壊が生じた時間と曲げ負荷による応力増分値を評価した。
その結果、負荷応力470MPaを境に遅れ破壊が発生することが確認できた。切り欠き周方向の残留応力は731MPaであったので、負荷応力494MPaを加えて1200MPaが供試材JSC1180の10%t穴抜きにおける遅れ破壊閾値として同定された。また、試験後の試験片切り口を撮影したところ、遅れ破壊による亀裂はせん断面より発生し、破断面へ伝播する様子が観察された。
一方、せん断加工における集合組織の変化を測定するために、理研小型中性子源RANSによる回折測定手法を開発した。2軸回転機構の導入、最適なバックグラウンドノイズ遮蔽、最適な回折スペクトル解析手法により、大型施設と同等の精度で鉄鋼材料の集合組織を測定することが、世界で初めて可能となった。これにより、塑性加工品の集合組織測定をラボレベルで実施する道が拓けた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

陰極チャージ材面内曲げ試験によるせん断加工部の遅れ破壊耐性評価用実験治具を用いた実験、観察を進め、応力と水素チャージ時間による破壊発生閾値を評価した。また、亀裂発生をFEM解析により再現するために昨年度までに構築した定式に基づき、亀裂伝播解析のためのコードを実装中である。さらに、小型中性子源を用いた集合組織測定手法開発が完了した。

今後の研究の推進方策

これまでに製作した遅れ破壊耐性評価用実験治具を用い、さらに打ち抜き条件を振った際の遅れ破壊発生応力の変化を調査するための実験を行う。具体的にはこれまでの10%tに加え、2%t、15%tのように振ってその影響を調査する。
破面性状の変化についても画像による観察を行い、実験パラメータとして遅れ破壊耐性への影響を調査する。
一方、打抜き破面の残留応力調査の一環として、多軸応力状態にある局部変形領域における応力測定法として中性子回折が有力であり、理研小型中性子源RANSによる残留応力測定実現に向けた中性子回折の高度化に着手する。ここでは、飛行時間(TOF法)及び角度分散法を用い、それぞれの手法における残留応力測定の分解能向上を試みる。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2020 2019 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] In-house texture measurement using a compact neutron source2020

    • 著者名/発表者名
      Xu, P.G., Ikeda, Y., Hakoyama, T., Takamura, M., Otake, Y. & Suzuki, H.
    • 雑誌名

      Journal of Applied Crystallography

      巻: 53 ページ: 444-454

    • DOI

      10.1107/S1600576720002551

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 陰極チャージ材面内曲げ試験によるせん断加工部の遅れ破壊耐性評価2019

    • 著者名/発表者名
      藤井貴浩,松野崇,Ridha Muhamad,浜孝之,箱山智之,高村正人
    • 学会等名
      日本塑性加工学会2019年度塑性加工春季講演会
  • [学会発表] 高張力鋼板せん断加工における課題と対策について2019

    • 著者名/発表者名
      松野崇
    • 学会等名
      令和元年度第3回創造例会,はりま産学交流会
    • 招待講演
  • [学会発表] 軽量化を目的とした自動車用鋼板高張力化の動向とCAEの活用2019

    • 著者名/発表者名
      松野崇
    • 学会等名
      鳥取県産業技術センター 自動車用鋼板の加工とシミュレーション技術講習会
  • [学会発表] 陰極チャージ材面内曲げ試験によるせん断加工部の遅れ破壊耐性評価2019

    • 著者名/発表者名
      藤井貴浩,松野崇,北條智彦,浜孝之,高村正人
    • 学会等名
      日本塑性加工学会第71回塑性加工連合講演会
  • [備考] RANS - 理研の小型中性子源システム

    • URL

      http://rans.riken.jp/

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公開日: 2021-12-27  

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