研究課題/領域番号 |
18H01760
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
岡田 純平 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (90373282)
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研究分担者 |
和田 武 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (10431602)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | アモルファスシリコン / 液体急冷法 / ガスアトマイズ |
研究実績の概要 |
アモルファスSiは薄膜半導体として広く用いられてきた材料である。近年ではアモルファスSiはリチウムイオン電池(Lithium-ion batteries: LIB)の容量を現在の10倍に増大できる材料として注目されており、アモルファスSiを工業的に大量生産する手法の開発が急がれている。アモルファスSiは、これまで、蒸着やシランを用いた気相成長によって作製されてきたが、量産が期待される液体急冷法では、アモルファスSiを作ることが不可能と考えられてきた。その理由は、液体Siは配位数6の金属であるのに対し、アモルファスSiが配位数4の半導体であるために、液体Siをそのまま凍結させただけでは配位数4の半導体a-Siが形成されないためである。近年、液体Siの結合状態が金属結合と共有結合が共存した特異な状態にあり、また液体Siを融点から大きく過冷させると、液体―液体相転移によって配位数4の半導体的な液体Siが現れる可能性が報告され、液体急冷によるアモルファスSi作製の可能性が開けてきた。我々は最近、静電浮遊法を用いて液体Siを融点から300K過冷却させ、ハンマークエンチ法を用いて過冷却液体Siを急冷することによって、アモルファスSiを作製することに世界で初めて成功した。この成果に基づき、本研究では、量産化への適用可能な液体急冷技術開発を目標として、ガスアトマイズ法および単ロール法を用いたアモルファスSiの作製に取り組んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ガスアトマイズ法を用いてアモルファスSiを作製するためには、1000K以上の動的過冷を必要とするため、直径50nmφ以下の微粒子を作製する必要がある。ガスノズルの改良などを進めることによって直径50nmφ以下の微粒子が得られるようになった。この微粒子からは回折線が見られないことから、アモルファスSiがガスアトマイズ法によって作製できたと考えられる。しかしながら、現在のガスアトマイズ法によって作製される微粒子の平均粒径は1~2ミクロンであるために、作製された大半の微粒子は結晶Siであった。現在はアモルファスSiを作製するために純Si融体を用いているが、今後は合金系にも目を向けて物質探索を行う必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
純Si融体の液体急冷によってアモルファスを得るためには、①急冷する際の純Si融体の温度を1440K以下に過冷させること、②固化の際に生じる大きな潜熱を確実に除去すること、が必要である。ガスアトマイズ法によって直径50nm以下の微粒液滴を作ることができれば、10の8乗/秒以上の冷却速度が実現できるので、上記のアモルファスSiの形成条件をクリアできると考えられる。しかしながら、現状のガスアトマイズ法では、液滴と高速ガスの接触条件にばらつきがあるために、作製される微粒子の粒径は20nm~30μmとばらつきが生じる。本課題の目的は、量産への展開が可能な液体急冷法を用いたアモルファスSi作製方法の開発であるために、現状の純Si融体を急冷する方法は量産への展開が困難であると判断した。今後は、Si合金融体の液体急冷によるアモルファスSi作製へ方針を転換し、研究を遂行する。
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