研究課題/領域番号 |
18H01767
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
小野 努 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (30304752)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 相転移 / マイクロ流路 / 溶媒拡散 / 微細構造 / スピノーダル分解 |
研究実績の概要 |
本年度の研究実績として,マイクロ空間内における迅速な溶媒除去に誘起される相転移現象が溶媒分子の拡散速度によって大きく影響を受けることを明らかとし,溶媒除去に伴う溶液粘度の上昇と同時に外部流体による流動を負荷とすることで,相転移時に分子が流動方向へ配向することがわかった。この現象に伴う流動方向への線速度の増大は,実際の計測が困難であることから,流体解析(CFD)シミュレーションソフトを用いて計算科学的に推測することも行った。この手法によって推定された線速度から,溶媒拡散後の径を予測することも可能であり,通常直接観察が難しい迅速な相転移による固化材料の形状とも良い相関を示すことが見出された。つまり,本年度の研究成果として,「送液制御」による微細構造形成における諸因子の一部を解明することができたといえる。 また,溶媒組成を上手く調整することで,溶媒拡散によってスピノーダル分解を起こし,その界面を微粒子で固定化することで特異な微細構造を形成できることも実験的に示した。コロイドソームやピッカリングエマルションとも呼ばれる界面への微粒子集積技術によって,通常観察することが難しい液ー液界面で形成される微細構造を固体界面へと転換することができる。今回,スピノーダル分解で形成した微細構造を共焦点レーザー顕微鏡などで観察して明らかにすることができ,申請書の目的の1つであった「平衡制御」による微細構造形成の要因を検討できることとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述の通り,当初申請段階で目的としていた「送液制御」,「平衡制御」による微細構造形成の因子解明に大きく近ける手法を見出すことができた。残りの期間で,もうひとつの「反応制御」による微細構造形成因子を明らかにするほか,いずれの制御法にも共通する構造形成因子を明らかにしていくことが期待できる成果である。それ故,当初の計画通り研究は順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
これまでも順調に研究は進展しているため,今後もこれまで同様に微細構造を制御する因子を明らかにするとともに,微細構造を任意で制御した材料設計へと展開していくととで,実用性に優れた研究成果へ発展させることができる。さらに,次年度以降は,現在フランスの研究機関とも国際共同研究する体制にあることから,緊密な情報交換を行うことで,本研究のさらなる推進を検討している。
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