本年度まで3年間でマイクロ空間内の送液制御,反応制御,平衡制御によって流体内の相転移が誘起され,様々な微細構造を制御できることが明らかにされてきた。マイクロ流路のジオメトリー(流路構造)は,流体の局所的な線速度を変化させてせん断力を生み,異相流体であればその混合挙動によって界面積を大きく増大させた。また,ここに重合反応が絡むと,重合によって高分子化することで流体粘度が変わることで相分離挙動は低速化されて非平衡状態に傾く。相図を駆使して平衡状態を考慮した溶媒拡散を行えば,スピノーダル分解や核生成領域を経て,最終的な微細構造も大きく変え得る。高速度カメラでのin situ観察,観察根幹なマイクロ空間における流体挙動については,CFDシミュレーションも駆使することで,多孔質微粒子やカプセル調製など,マイクロ空間における精密な液滴制御技術と融合することで,高度な微細構造あるいは表面モルフォロジーに影響を与えるコロイド材料の調製の研究成果とそれに関する新たな知見が得られた。ただし,CFDシミュレーションでは流体間の物質移動まで考慮した計算ができていないため,相分離挙動まで正確に記述することは現時点ではできていない。それでも今回得られた成果のうち,マイクロ流路内で流路を狭めることによって得られる大きな線速度の増大が調製される繊維の構造や物性に影響をおよぼすことが見いだせてきたため,同技術をさらに発展させることを目指している。
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