研究課題/領域番号 |
18H01771
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
久保 正樹 東北大学, 工学研究科, 准教授 (50323069)
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研究分担者 |
小林 大祐 東京電機大学, 工学部, 准教授 (30453541)
安田 啓司 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (80293645)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 超音波 / コポリマー / 感温性 / 共重合組成 / 分子量分布 |
研究実績の概要 |
本研究では、超音波を用いたコポリマー合成法において、感温性コポリマーを対象として、反応速度を精緻に制御することによって共重合組成とブロック性を制御し、感温性コポリマーの特性を制御するプロセスを構築することを目的とする。 今年度は、以下の3つの項目について検討を行い、知見を得た。 まず、超音波強度を調節可能なコポリマー合成装置を作製し、その評価を行った。評価法には、反応器内に投入された熱量を評価するカロリメトリ法を用いた。また、超音波による機械的作用は、超音波による高せん断場の標準的評価法であるポリマー分解法での評価を試みた。これらの知見を元に、種々の超音波強度の条件下でコポリマーの合成を行い、分子量、分散度に加えて、コポリマー組成に及ぼす超音波強度の影響を明らかにした。 次に、合成したコポリマーの特性評価を行った。まず、種々の超音波強度で合成したコポリマーについて特性評価を行った。その結果、超音波を利用することによって、従来の化学的開始剤を用いた方法では獲得することができない、コポリマー組成から予測される応答温度よりも高い応答温度を示すコポリマーが合成できることを示し、超音波ポリマー合成法の優位性を実証した。そして、ホモポリマーのせん断分解によるポリマーラジカル生成反応を利用して、ホモポリマーの末端にモノマーを付与することによってブロック性のコポリマーを合成することに成功した。 さらに、コポリマー生成速度論モデルの構築を行った。本モデルでは、ラジカル生成反応、連鎖成長反応、交差成長反応、停止反応、ポリマー分解反応を考慮しており、かつ、ラジカル生成反応およびポリマー分解反応は超音波強度の影響を考慮した反応速度を組み込むことに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
超音波強度を調節可能なコポリマー合成装置に関しては、1年目に、装置の仕様を満たす反応器、恒温槽の設計に時間を要し、信号発生機の一部であるパワーアンプの輸入・購入に予想よりも長い時間がかかることが分かり、パワーアンプの納入が2年目に遅れることになった。本年度、設計の使用を満たすパワーアンプを選定、購入し、装置を組み上げ、性能評価を行い、実験データの獲得に至った。 合成したコポリマーの温度応答性の評価に関しては、超音波照射条件との関係を解明することができ、かつ、プロック性コポリマーの合成手法の開発に成功するなど、順調に進めることができた。 コポリマー生成速度論モデルに関しても、定量的な精度において検討・改良の余地はあるものの、超音波照射条件に関する定性的な評価か可能なモデルを構築することができた。 全体的に考えると、1年目に遅れていた装置の作製とその評価を、当初の計画どおり2年目に完了することができ、進捗状況は概ね順調に進展していると言え、当初の計画以上に進展している、という判断に迫るものである、と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの成果によって、本研究で取り扱うコポリマーは、構造が近いモノマーを用いていることから、共重合組成はNMRで評価できるものの、シーケンスの評価は困難であることが分かっている。そこで、熱重量分析によってガラス転移温度を評価し、ブロック性の指標の一つとする。そして、コポリマーの共重合組成・ブロック性とコポリマーの温度応答性・機械的特性などとの相関を解明する。そして、これまでに獲得した知見、構築した速度論モデルに加えて、コポリマーの共重合組成・ブロック性とコポリマー特性との相関を駆使して、所望の特性を有するコポリマーの合成条件を決定する手法の確立を目指す。
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