研究課題/領域番号 |
18H01774
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
辻口 拓也 金沢大学, 機械工学系, 准教授 (10510894)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 直接形燃料電池 / 気液2相流 / 多孔質電極 / 物質移動 |
研究実績の概要 |
本研究では直接形電池や固体高分子膜を用いる水電解装置などに代表される、液体供給形エネルギーデバイス(LSED)の多孔質電極内部の物質移動現象の解明に取り組む。近年のデバイスの高性能化に伴い、電極内部物質移動の解明と制御が高効率化に重要であるにもかかわらず、これまでほとんど議論の対象となっていない。また、LSEDには液体供給、気体生成という物質移動の類似性があるにもかかわらず、デバイスごとの実験的な研究に終始しており物質移動に関して統一的な検討事例がない。そこで本研究では、実験的な物質移動流束解析とそれに基づく数値シミュレーションにより液体供給系の多孔質電極内部物質移動現象を解明する。本研究によりこれまで未確立であった液体供給系の多孔質電極内部気液2相物質移動に関する学術基盤の樹立、および各デバイスの効率向上に向けた電極設計指針の確立を目指し、(1)DLFCの電極作製・評価・発電試験、(2)PEMECの電極作製・評価・発電試験、(3)電極内部物質移動流束解析、(4)数値解析モデルの作成と数値解析に取り組む。 平成30年度では(1), (3)を中心に取り組み、(2),(4)は次年度以降の準備を進めた。(1)ではギ酸を燃料とした従来の粒子触媒とギ酸活性の高い繊維状触媒の作製に取り組み、従来よりも高い活性の触媒を作製した。また、この繊維触媒を用いた、物性(空隙・細孔特性)の異なる新たな電極の作製に取り組み、電極形成に向けた指針を得た。(3)においては、ギ酸を燃料として、粒子触媒を用いた際の物質移動特性を測定し、今後繊維状触媒や細孔特性の異なる電極を作製、評価する際の礎とした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね計画通り順調に推移しているが、物性の異なる電極の作製に関して当初想定していた作製方法では空隙・細孔特性の制御が困難で、物質移動の体系的な理解が困難であると判断し、新たな電極作製方法を模索し、これを確立した。当初計画よりも広範囲に渡る物性評価が期待できるようになった反面、電極作製方法の確立に時間がかかったため、電極を用いた物質移動特性の評価には至らなかった。これらより、計画以上の進展と計画よりもやや遅れている部分がいずれも存在するため、概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は3年間での実施を予定しており、実験・数値シミュレーションによる物質移動解析にもとづくLSEDの電極設計指針を提案することを最終目的とし、(1)DLFCの電極作製・評価・発電試験、(2)PEMECの電極作製・評価・発電試験、(3)電極内部物質移動流束解析、(4)数値解析モデルの作成と数値解析を実施検討する。このうち平成31年度は平成30年度に引き続き(1)・(3)を行う予定である。 (4)に関しては昨年度実験環境の整備や基本数値解析モデルを構築したため、本年度はモデルの高度化汎用化を進める。(1)ではギ酸に加えメタノールを燃料としたDLFCの電極をそれぞれ作製し、空隙率、厚さ、液体・気体透過率、細孔分布、接触角などの諸物性及び発電(電解)特性におよぼす影響を評価する。その際に、従来の粒子触媒とギ酸・メタノール酸化活性の高い繊維状触媒を併用することにより様々な物性をもつ電極を作製して評価を行う。(3)では昨年度までにおおよそ物性の異なる電極の作製が可能となったため、それらを用いて各物質の透過流束を測定・評価する。また、これらの移動現象における類似性に関して、メタノールとギ酸を用いてDLFCにおいて物質移動の類似性が成立するかについて議論する。また、(4)では数値シミュレーションの汎用化に向けて、DLFCの物質移動現象を再現可能な数値解析モデルの作成に着手する。昨年度確立したモデルに実験で得られた物性を用いることで、実験的・解析的に物質移動の可視化に取り組む
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