研究課題/領域番号 |
18H01775
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
渡部 綾 静岡大学, 工学部, 准教授 (80548884)
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研究分担者 |
福原 長寿 静岡大学, 工学部, 教授 (30199260)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 脱水素 / 低級アルカン / 硫化水素 / 硫化物 / レドックス |
研究実績の概要 |
金属硫化物は,石油精製化学における脱硫触媒としてよく知られている。近年,この触媒において,金属硫化物中の格子硫黄が自立的なレドックス(酸化還元)機能を有し,反応基質の選択的な物質変換に強力な力を発揮することが注目されている。問題なのは,現在までにおいて硫化物の格子硫黄のレドックス性と反応性との関係が曖昧であり,まだ体系化に至っていない点である。そもそも硫化物の構造とレドックス性の関連についても明確ではない。それゆえ,硫化物の構造,レドックス性,反応性の関連を明らかにすれば,目的とする反応に対して最適な硫化物の触媒設計が可能になる。このような状況を踏まえ,本研究は,硫化物触媒における表面格子硫黄のレドックス機能を活用した連続的かつ高選択的な低級アルカン脱水素プロセスの創生を目的とした。 2019年度は,前年度に開発したFeとRuをSiO2に担持したFe-Ru/SiO2触媒の反応性の開拓を目的にエタンやブタンの脱水素を実施し,触媒の耐久性向上を目的に水素共供給条件における脱水素特性を調査した。Fe-Ru/SiO2触媒は,エタンの脱水素においてエチレンを選択的に生成したが,ブタンが原料の場合には熱分解の進行によりC4オレフィンの選択率は低かった。反応温度の低温化で熱分解が抑制され,選択的にC4オレフィンを得られることがわかった。炭素数の違いにより反応条件の最適化が必要であるが,アルカンの脱水素にFe-Ru/SiO2触媒が有効であることが明らかになった。また,アルカンの脱水素へ水素共供給を実施した結果,反応50時間の間全く劣化することなく,脱水素活性を維持することを達成した。脱水素によりオレフィンを連続的に製造した前例は数少ない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初予定していた高選択的なオレフィン製造プロセスの開発について,計画に沿った成果を得ることができたため。さらに,水素の共供給により全く触媒劣化が起こらず連続的なオレフィン製造を達成したため,本研究課題が当初の計画以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
硫化水素と同時に水素を共供給することで連続的なオレフィン製造を達成したため,その要因の調査を目的に,XRD測定やXAFS測定を実施してFeやRuの構造,電子状態などの物理化学的特性を評価する。さらに,硫化水素共存のアルカン脱水素に対して,硫化物触媒の表面格子硫黄が介在するレドックス機構の実証を目的として,速度論的手法による現象把握を展開する。脱水素に伴う表面格子硫黄の放出・再生過程を質量分析計で追跡し,解析することで,触媒中の格子のレドックス性を検証する。ここで得られた結果を基にして,レドックス型触媒機構の学理を開拓する。
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