研究課題/領域番号 |
18H01777
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
山本 徹也 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (10432684)
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研究分担者 |
入澤 寿平 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (30737333)
荒川 賢治 広島大学, 先端物質科学研究科, 准教授 (80346527)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 炭素繊維 / CFRTP / 界面接着性 / 高分子コロイド / シリカナノコロイド / リサイクル / 表面修飾 / 微生物毒性 |
研究実績の概要 |
炭素繊維強化熱可塑性樹脂(CFRTP)の力学物性を向上させる為にソープフリー乳化重合法で高分子コロイドを調製した。これを炭素繊維表面に電着させ,CFRTPの曲げ強度を向上させることに成功した。これは炭素繊維表面に吸着したシリカコロイドが熱可塑性樹脂との複合時に働く炭素繊維間の凝集作用を抑制したことに起因する。また同様の表面修飾操作をシリカナノコロイドを利用して行ったところ,曲げ強度と熱分解法によりリサイクルした炭素繊維の強度を保つことに成功した。 表面修飾時に用いた高分子コロイドの合成時に排出される上澄み液をマイクロコッカスを利用したバイオアッセイ試験に用い,上澄み液の微生物毒性を調査した。その結果,カチオン性のポリスチレンで分子量が1000未満のポリマーが特に微生物毒性を示すことが明らかになった。サイズが100nm以上の高分子コロイドには微生物毒性がなかった。またビニル基に芳香環が直接結合しているモノマーを用いた重合を用いると,その芳香環に多様な官能基が結合していても微生物毒性を示すことから,微生物毒性にポリマーに含まれる芳香環が深く関与していることが分かった。 高分子コロイドの分散安定性について,モノマー種と開始剤の組合せを幾つか試して重合してみたところ,開始剤官能基が負帯電を示すものとアニリンやピリジンと結合するビニルモノマーを重合に用いると,モノマーと開始剤のそれぞれの官能基間に静電相互作用に基づく引力が作用するため,高分子微粒子同士の凝集が起こり,不安定になることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目標であったCFRTPの力学物性を向上させること,および熱分解法によりCFRTPから高強度の炭素繊維を回収することに成功しており,また材料強化のための表面修飾に用いる高分子コロイドの微生物毒性に関する研究についても成果が得られた。学会発表,論文発表についても多数行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
微生物毒性とポリマーの分子構造あるいはポリマーの形態との関係性を微生物マイクロコッカスを用いたバイオアッセイ試験を通して明らかにする。マイクロプラスチック汚染が問題になっており,プラスチックが生体内に入り分解された時に,どのような危険性があるのかを調査する。具体的には,ポリマーの分子量と形態が微生物に与える影響を評価し,ポリマーが生体内で分解される行程を模擬する。CFRTPについては,実用化を念頭におき,さらに高強度の材料を作製し,一般自動車への適用を考えたときに,CFRTPの破壊挙動についても検討する必要がある。具体的には,自動車事故の際にCFRTPが破壊され,その時に炭素繊維部分が破断しないような構造が必要であると考えている。すなわち安全に壊れるCFRTPの作製を目指して研究に取り組む予定である。
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