研究課題/領域番号 |
18H01778
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
河瀬 元明 京都大学, 工学研究科, 教授 (60231271)
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研究分担者 |
蘆田 隆一 京都大学, 工学研究科, 講師 (80402965)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 電気化学反応 / 選択 / 水素 / 化成品 / 界面電位差 |
研究実績の概要 |
エタノールの部分酸化によるアセトアルデヒド合成を取り上げ,反応速度論的な研究を行っている。この反応系は逐次反応であり,アセトアルデヒドはさらに酸化されると酢酸となる。電気化学反応の場合,アノードでの電極反応式と標準電極電位は次の通りとなる。 C2H5OH → CH3CHO + 2H+ + 2e-, -0.215 V vs. NHE CH3CHO + H2O → CH3COOH + 2H+ + 2e, -0.102 V vs. NHE アルコール酸化とそれに続くアルデヒド酸化では平衡電位が異なるため,電位によっても選択性を変えることができる。カソードでは次式で水素が生成し,カソードでの水素製造とアノードでの化成品合成が行える反応系である。2 H+ + 2 e- → H2 流通式の平板電極フローセルを作製して実験に用いた。有効電極面積25 cm2の白金被覆電極を用い,電極間距離は480μmとした。電極の外側には絶縁のためのPTFE製エンドプレートと機械的強度のためのステンレス鋼製エンドプレートを設け,電気的接触と流体のシールを確保する構造とした。A/vは電極面積Aと原料流量vの比であり,反応場が2次元である電極反応において滞留時間に相当する。A/v = 62.5 min・cm-1における各生成物のエタノール基準選択率と界面電位差の関係をみると,目的生成物であるアセトアルデヒドの選択率は界面電位差が0.8~1.0 Vで最大となり,生成物の選択率は界面電位差によって制御できることが示された。また,界面電位差と電流密度との関係を定式化することでエタノール電解酸化反応の系におけるTafel式が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
界面電位差1.0 Vにおける各物質の濃度とA/vの関係が得られた。エタノール濃度はA/vに対して単調減少し,アセトアルデヒド濃度は極大を持ち,酢酸濃度,二酸化炭素濃度は単調増加した。これよりエタノール電解酸化反応は逐次・並列反応であることが確かめられた。 界面電位差と電流密度の関係の解析にTafel式を用いた。複数のA/vから得られたパラメーターの平均値を用いたTafel式での計算結果と実験結果は良好に一致し,エタノール電解酸化の系におけるTafel式が得られた。 (1) i = 5.22 mA・m^(-2) exp(6.62 η/V), C2H5OH → CH3CHO + 2 H+ + 2 e- (2) i = 0.334 mA・m^(-2) exp(6.09 η/V), CH3CHO + H2O → CH3COOH + 2 H+ + 2 e- (3) i = 48.5 mA・m^(-2) exp(4.60 η/V), C2H5OH + 3 H2O → 2 CO2 + 12 H+ + 12 e-
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今後の研究の推進方策 |
流通式の平板電極フローセルで得られた実験結果から,界面電位差と濃度の関数として反応速度を定式化し,物質輸送抵抗の影響を受けた実際に観測される反応速度を予測する理論へと展開を図る。得られた反応速度式を用いて,アセトアルデヒド製造プロセスの概念設計(プロセス設計)を行い,プロセス全体の経済評価によって,従来プロセスに比べて水素ならびに化成品の生産コストが低減できるかを検討し,提案プロセスの実現可能性を検証する。
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