黒鉛層間金属化合物の調製において、黒鉛種の影響について検討した。 種々のサイズの人造黒鉛試料(表面積20-750 m2/g)と塩化白金を混合し(白金量15w%)高圧塩素下での熱処理と水素下での熱処理により、黒鉛層間に塩化白金の挿入と層間での白金微粒子の形成を試みた。電子顕微鏡観察により、表面積300 m2/gまでの黒鉛試料に対しては厚み1-3 nm、幅5-300 nmのシート状の白金微粒子をその層間に形成できることを明らかにした。シートには六角形の穴や120°に折れ曲がった縁を多数有していた。また、500m2/g以上の表面積を有する黒鉛試料に対しては白金微粒子はその層間に挿入されるがシート状とはならずいびつな構造を形成することが示された。超臨界二酸化炭素溶媒を用いるシンナムアルデヒド水素化反応に対しては、表面積の小さな黒鉛に白金ナノシートを形成した試料が高いシンナミルアルコール選択性を示ことを明らかにした。 天然の黒鉛に対しての金属微粒子の挿入の可能性について検討した。黒鉛粉末と塩化白金を混合し塩素処理と水素処理により、天然黒鉛に対しても厚み1-3nm、幅5-300nmの穴の開いたシート状の白金微粒子を層間に形成できることを電子顕微鏡観察により明らかにした。シートの形状やサイズについては天然および人造に違いは見られなかった。また、低倍率での観察から、天然黒鉛では黒鉛片の外側に白金シートが多く存在し、人造黒鉛では黒鉛粒子の内側にも多く存在することが示された。またシンナムアルデヒド水素化反応の活性および選択性については人造および天然黒鉛の違いは見られなかった。
|