研究実績の概要 |
本研究では、バイオマス由来のブタンジオール(BDO)類を選択的に脱水させ、効率的にブタジエンへ誘導するための触媒として、結晶性複合酸化物を触媒ターゲットにした研究を提案した。ブタジエンをBDO類から選択的に生成するためには、効率的に中間体の不飽和アルコールを経由する必要がある。そのため、特定結晶面を表面に有する結晶性複合酸化物を触媒として用いることに着目した。 当初、提案したビクシバイト型YbFexMnyOzに加え、ジルコン酸塩の1,3-BDOの脱水反応に対する触媒性能を調査した結果 より高い不飽和アルコール選択性を示すYb2Zr2O7(RZO)触媒を見出した。RZO触媒は規則正しい酸素欠損点を表面に露出するビクシバイト型とは異なり、表面酸素の1/8がランダムに欠損した立方晶フルオライトであることが判明した。 RZO触媒の構成元素をYb以外の14種類の希土類元素で置換した触媒を検討した結果、1,3-BDO以外に1,4-BDOの選択脱水反応に対しても触媒活性を示すことが判明した。RZO触媒は置換元素がLaなど軽希土類元素のとき、パイロクロア相とジルコニア相の混合相となり、触媒活性は低かった。一方、置換元素がHoからLuまでの6種の重希土類元素の場合、立方晶欠損型フルオライトが形成され、1,3-および1,4-BDOの選択脱水反応に高い活性を示した。これらの中でもY:Zr=1:1組成の立方晶フルオライト型Y2Zr2O7触媒がBDO類の選択脱水反応に対して高い不飽和アルコール選択性と高い活性を示した。 さらに、反応温度などの条件を検討した結果、Y2Zr2O7触媒は1,3-および1,4-BDOを高い選択率で直接一段でブタジエンに脱水させることができた。高い結晶性を有し、酸素欠損点を表面に露出した立方晶フルオライト型Y2Zr2O7触媒が本脱水反応に対して高い選択性を示すことを立証した。
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