研究課題/領域番号 |
18H01787
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
薩摩 篤 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (00215758)
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研究分担者 |
大山 順也 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (50611597)
沢辺 恭一 名古屋大学, 工学研究科, 講師 (80235473)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 触媒反応 / ナノ材料 / 環境触媒 / in-situ / operando |
研究実績の概要 |
2018年度は3課題における5つの問いについて検討し、次に示す成果を得た。 [課題1]貴金属フリー自動車三元触媒: 問1:In-situ IRやTPSR実験および理論計算により、スピネル構造は表面の局所構造によりコランダム構造よりもNO吸着エネルギーが強く吸着NOの反応が高いため、高いNO還元活性を示すことを明らかにした(現在投稿中)。問2:この課題は良い意味で予想外の結果が得られた。NiFe2O4の反応機構をin-situ/operando分光で調べたところ、炭化水素から派生したアセテート種は反応中間体でもあり、NO-CO反応の阻害物質であることが解った。このため2段の触媒層をもつタンデム触媒を開発し、①酸素による炭化水素の燃焼除去、②後段でのNO-CO反応、と役割を分けた。その結果、NiFe2O4よりも一桁高いNO還元活性で、貴金属触媒を超えるNO還元活性を得ることに成功した。(論文3,特許出願1) [課題2]担体-貴金属相互作用:問3:In-situDXAFSによりメタン酸化反応場でのPdの酸化還元挙動の速度解析を実施した。金属Pd粒子中に部分的に酸化されたPdOが存在する状態でメタン酸化活性が高くなることを示した。(論文1)問4:コロイド法によるナノ粒子(2.5~15nm)を合成し、種々の担体に担持した。多くの場合、メタン燃焼活性は担体によらずPd粒子径に依存し、担体よりも粒子形態の効果が大きいことが判った(論文準備中)。 [課題3]燃料電池電極触媒: 問5:Pt表面を15種の異種金属で修飾したところ、活性は添加金属の酸化電位と山形の相関性が見られた。これはPtがH2の解離サイト、添加金属がOH吸着サイトとして働く二機能性触媒であり、添加金属による最適な強度のOH吸着により活性の促進が可能なことを示した(論文2)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
課題1において当初計画より1桁高いNO還元活性を発揮するタンデム触媒システムを開発した。これは機能を分離した2段の触媒層をもつ触媒系であり、当初計画していた1種類のスピネル型触媒では到達出来なかった性能である。この研究の芽を伸ばすため、課題1については、前段の炭化水素選択酸化触媒の開発を今後積極的に進める。具体的には、現時点では前段のHC選択酸化触媒に毒性の高いCr系酸化物を用いているため、今後は毒性の低い成分によるHC選択酸化触媒を開発する。なお他の課題は概ね計画通りに進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度の成果を踏まえて本年度は以下の検討を行う [課題1]金属酸化物による貴金属フリー自動車三元触媒:昨年度は2段の触媒層をもつタンデム触媒を開発し、①酸素による炭化水素の燃焼除去、②後段のNO-CO反応、と役割を分け、NiFe2O4よりも一桁高いNO還元活性で、貴金属触媒を超えるNO還元活性を得ることに成功した。タンデム触媒の現時点の問題は、前段の炭化水素選択酸化触媒に毒性の高いCrを含む材料を使っている点にある。このため、本年度から来年度にかけて低毒性の酸化物をベースとする触媒を開発する。予備実験で担持V2O5が比較的良好なHC選択酸化触媒として働くことを見いだしている。Raman, IR, UV-Visなどのin-situ/operando分析を駆使しながら、種々の金属酸化物への担持によりさらにその活性の向上を目指す。 [課題2]担体-貴金属相互作用による触媒活性の制御:本課題についてはこれまでメタン酸化反応のみを検討課題としていた。しかしながら、環境汚染物質は様々であり、異なる基質での結晶面露出効果を明らかにする必要がある。本年は、COについて酸化反応活性と担体-貴金属相互作用による触媒活性の相関関係を調査し、精密な制御に基づいた触媒設計指針を明らかにする。 [課題3]金属粒子の合金化・サイズ制御によるアルカリ電解液中での水素酸化反応の活性制御: 昨年度は、Ptベースの電極触媒にOH吸着サイトとして働く金属を添加して二元的な機能を付与することにより、水素酸化反応の活性制御が可能であることを示した。ではPt以外の触媒系でも同様の効果が得られるであろうか。あるいは二元機能の機構をin-situ/operando分析により直接観察できないであろうか。本年度はこれらの課題の取り組む
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