研究実績の概要 |
これまでの検討によって,希土類を添加した酸化ガリウム光触媒(RE/Ga2O3)がH2Oを電子源とするCO2の光還元に高いCO2の転化率およびCOへの選択率を示すことを明らかにしてきた.H2Oを電子源とするCO2の光還元はH2Oの光分解によるH2生成と競争的に進行し,前者に比べて後者の反応の方が進行しやすいことが知られている.すなわち,本検討によって希土類が効果的に機能したためH2Oの光分解ではなく,CO2の光還元が進行したと考えられる.希土類はCO2の吸着を促進する塩基点として働いていると考えられるため,2019年度においては,サンプルの特性評価を,XRD, UV-Vis DRS, BET比表面積分析, XPS, XAFS, SEM,TEMなどを用いて行った.その結果,希土類酸化物は容易にH2Oや水中に溶解したCO2と反応し,水酸化物,酸炭酸化物,炭酸化物などへと変化することが明らかとなった.XRD測定を行った結果,反応前の希土類種には,RE2O2CO3に帰属される回折ピークを確認した.一方RE/Ga2O3のL3-edge EXAFSスペクトルは,RE2O2CO3のスペクトルと一致せず,RE(OH)3のスペクトルに近かった.これらの結果から,RE(OH)3及びRE2O2CO3の混合物が生成していることが示唆された.さらに,RE/Ga2O3をNaHCO3溶液に浸すとこれらの種はRE2(OH)2(3-x)(CO3)xとPr2(CO3)3 8H2Oへと変化し,光照射を行うとほぼすべての希土類種がPr2(CO3)3 8H2Oになった.すなわち,希土類種が光触媒表面上でのCO2の吸着・濃縮・貯蔵を促進し,その結果として高いCO2の転化率及びCOへの選択率を示したことが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書においては2019年度の研究計画として「コンポジット材料の特性評価による希土類種の同定」を掲げていた.実際にXRD, UV-Vis DRS, BET比表面積分析, XPS, XAFS, SEM,TEMなどの各種特性評価法を用いて前年度に見出した触媒群のキャラクタリゼーションを行い,表面種の同定に成功した.一方で添加した希土類材料が持つ塩基点の量および強度を調べるためにCO2-TPDプロファイルの測定を行う予定であったが,装置作成までで実際に測定を行うには至らなかった.来年度の計画である赤外吸収スペクトルの測定についてはすでに装置の立ち上げ,整備などを終了しているため,研究は順調に進捗しているとした.
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