研究実績の概要 |
これまでの検討により,Ga2O3光触媒上に修飾した希土類酸化物が,CO2を捕集する固体塩基として機能することによって,固体表面での局所的なCO2濃度が向上し,結果としてH2Oを電子源とするCO2光還元において,高い活性・選択性を示すことが明らかとなった.前年度におけるXRD, UV-Vis DRS, BET比表面積分析, XPS, XAFS, SEM,TEMなどを用いた特性評価の結果から,光触媒上に修飾した希土類種は反応中においてはRE2(OH)2(3-x)(CO3)xやPr2(CO3)3 8H2Oのような炭酸化物へと変化していることが明らかとなっている.本年度においては希土類材料が持つ塩基点の量および強度を調べるためにCO2-TPDプロファイルと赤外吸収スペクトルを同時に測定することを計画したが,正確な定性・定量には至らなかった.一方で,このような固体塩基性を示す材料の光触媒への修飾の効果を調べるために,固体塩基としてよく知られているアルカリ土類金属酸化物の修飾を試みた.その結果,助触媒としてAg@Cr,光触媒としてGa2O3を用いたAg@Cr/CaO/CaGa4O7/Ga2O3が極めて高いCO生成速度(0.835 mmol/h)およびCOへの選択性(94.5%)を示すことが明らかとなった.各種の検討の結果から,光触媒上に修飾したアルカリ土類金属酸化物種は単に表面近傍の局所的なCO2濃度を高めるだけではなく,助触媒の光電析中にアルカリ土類金属酸化物種が溶出することによって,溶液中のpHが変化し,助触媒であるAg@Crの構造や特性にも影響を与える可能性があることが示唆された.実際にpHを水酸化ナトリウム等でコントロールして助触媒の光電析を行ったサンプルはコントロールしない場合に比べて高い活性を示した.
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