研究課題
磁性細菌は、細胞内に脂質二分子膜から成る微小空間(コンパートメント)を形成し、この中で単結晶の酸化鉄磁性ナノ粒子を合成する。この合成プロセスには複数のタンパク質が関与しており、遺伝子から発現したタンパク質が、コンパートメント内に順序立てて配置され、連続的で精巧な磁性ナノ粒子の化学反応プロセスがコンパートメント内で構築されている。本研究では、コンパートメントの機能と構造を遺伝子工学的に改変することで、従来の化学合成系では実現のできない、新しい形態や組成を持つ磁性ナノ粒子の合成プロセスの構築を目的としている。本年度は、これまでに作製した組換え株の鉄イオンをはじめとする金属イオンの取り込み能について定量的に評価した。培地中に含まれる各種金属イオンの濃度変化を測定し、細胞当りの金属イオン取り込み量を明らかにした。また、磁性ナノ粒子への各種金属イオンの含有率、取り込まれた金属イオンがコンパートメント内で磁性ナノ粒子へ変換される割合を求め、導入した遺伝子の磁性ナノ粒子合成における機能を明らかにした。また、酸化鉄磁性ナノ粒子の化学合成系において、小さな微粒子の集合によって結晶化プロセスが制御されることを明らかにし、熱力学的なモデルを立てた。このモデルを用いて、系内の初期鉄イオン濃度から、形成する酸化鉄ナノ粒子のサイズ予測が可能であることがわかった。さらに磁性ナノ粒子のサイズと同時に、その磁気特性制御が可能であることを示した。
2: おおむね順調に進展している
初年度の研究において、遺伝子導入や欠損により細胞内コンパートメントの機能改変が可能であり、遺伝子発現量制御により、磁性ナノ粒子の数やサイズの制御が可能なことを示した。本年度は、細胞や磁性ナノ粒子の金属含量と組成解析から、従来得られた成果の妥当性を示すことができた。当初の目的に向けて、おおむね計画通り順調に進展していると考えている。
本年度は、下記の研究項目について検討を行う。-磁性ナノ粒子への多様な金属元素の導入と組成解析・磁気特性評価-磁性ナノ粒子の合成量制御系の確立
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)
NATURE MATERIALS
巻: 19 ページ: 391-396
10.1038/s41563-019-0511-4