研究課題/領域番号 |
18H01804
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
三友 秀之 北海道大学, 電子科学研究所, 准教授 (50564952)
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研究分担者 |
矢野 隆章 東京工業大学, 物質理工学院, 助教 (90600651)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 金ナノ構造 / 動的構造制御 / 表面プラズモン共鳴 / ゲル / 脂質膜 |
研究実績の概要 |
本研究では、金属ナノ構造体が特定波長の光の照射下で示す表面プラズモン共鳴を利用した生体高分子の高感度検出法として、表面増強ラマン散乱測定基材の開発に取り組んでいる。表面プラズモン共鳴は金属ナノ構造体の中でも鋭利な部分で強く増強され、特に狭いギャップ部位において著しく増強されることが知られているが、狭いギャップ部位に大きな生体高分子を導入することは容易ではない。これまで研究実施者はハイドロゲルの体積変化を利用することでギャップ距離を動的に制御する手法により狭いギャップ部位に大きな物質を導入する効率を高める手法を開発してきたが、さらなる高感度化が必要であった。そこで、本年度はゲルを利用した金ナノ構造体間ギャップ距離の制御性について、原子間力顕微鏡観察、電子顕微鏡観察、顕微分光測定とプラズモンスペクトルの計算により、詳細に調べた。その結果、金ナノ構造体作製時の洗浄と表面処理を適切にすることで、金ナノ構造体は数ナノメートルの精度で均一に動かせるようになることが確認され、高い制御性を実現できることが明らかになった。しかしながら、電子線リソグラフィを利用したナノ構造体の作製では鋭利なエッジ構造を作製することは未だ困難であるため、ナノ粒子を適切に配置して利用する手法の開発にも取り組んできた。実際には、基板上に脂質膜を固定化し、その上に鋭利なエッジを有する三角形プレート状ナノ粒子を固定化する手法を開発している。これまでに、脂質および金ナノ粒子の固定化については確認できており、現在は金ナノ粒子が脂質膜上で流動的に動き、最適化な配置の形成が可能であるかの検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度においては、基板上に脂質膜を固定化し、その上に鋭利なエッジを有する三角形プレート状ナノ粒子を固定化することに成功している。現在、金ナノ粒子が脂質膜上で流動的に動き、最適化な配置の形成が可能であるかの検討を進めているところであり、まだ確認は完了していないが、想定通りに進んでいると考えている。また、ゲルの上に固定化した金ナノパターンの変化の詳細な解析も完了しており、今後の構造評価において役に立つ知見も得られてきている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、脂質膜固定化基板上で、静電的に吸着させた金ナノ三角形プレートが流動的に動けることを確認する。その上で、ゲルの上に固定化した金ナノ構造体の上に、脂質膜を固定化し、金ナノ三角形プレートを固定化した基板を作製する。ゲルの体積変化によるギャップ距離の制御を行い、三角形金ナノプレートが最適な向きに自律的に配置できるかを確認する。最終的には、脂質分子として糖脂質などを用い、ウィルスなどの検体を積極的に検出するシステムへの展開を検討していく。
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