研究課題
本研究代表者は、局在表面プラズモン共鳴(LSPR)を発現する様々な金属ナノ構造体の化学的合成、及び、それらが磁場環境下において光(円偏光)とより広範な相互作用が誘起される事を期待して「ナノ構造体近傍の化学的環境の精密制御」を目指し、新規な磁気円二色性(MCD)応答やその増強・変調を試みる事、その応答のメカニズムを明らかにする事、種々の物質系に応用してプラズモニクスの発展に資する事を主な目的と定めて研究を遂行している。本年度は、高次モードのLSPRが発現するサイズの大きな(100 nmを超える)銀ナノ粒子、更には、金や銀では見られない紫外(UV)領域にLSPRの発現が期待されるロジウム(Rh)ナノ構造体(ナノキューブ・ナノマルチポッド)の作製とそのMCD応答調査を中心に研究を展開した。その結果、高次モード、とりわけ、四重極子や八重極子に起因するLSPRを発現する銀ナノ粒子をシード成長法によって作製し、直径は100nmを超えるものの極めてサイズの揃ったナノ粒子試料の作製に成功した。その銀ナノ粒子は、特に八重極子によるLSPRは通常の吸収分光測定では検出できなかった一方、MCDでは高感度に検出可能である事を見出した。更にRhについては、球形のナノ粒子ではLSPR発現位置は真空紫外領域となるためその形状の異方性制御に努め、その結果、キューブやマルチポッド型のRhナノ構造体の作製に成功した。その吸収はブロードな極大を示し、これがLSPR応答であると期待された。しかしながら、吸収に対応するMCD応答は自由電子による微分型のマグネトプラズモン応答とは全く異なり、最近提唱されているLSPR応答を否定する結果となった。これは安易なLSPR帰属に対して注意を促す重要な知見である。これら様々な金属やそのナノ構造体に対してそのMCD応答の特徴・有用性を明らかにする事ができた意義は大きい。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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