研究課題/領域番号 |
18H01829
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
片山 光浩 大阪大学, 工学研究科, 教授 (70185817)
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研究分担者 |
小松 直樹 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (30253008)
久保 理 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (70370301)
田畑 博史 大阪大学, 工学研究科, 助教 (00462705)
森川 良忠 大阪大学, 工学研究科, 教授 (80358184)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ナノコンポジット / 半導体単層カーボンナノチューブ / モノマー金属ポルフィリン錯体 / 生体ガスセンサー / ガスバイオロジー |
研究実績の概要 |
本年度は、検知対象ガスとしてアンモニア(NH3)を取り上げ、NH3に対して分子識別能をもつポルフィリン錯体の合成、およびポルフィリン錯体担持半導体単層カーボンナノチューブによるNH3ガスセンサーの開発を目的とした。まず、標準ガス希釈器(希釈率:1/1000)を導入し、濃度制御極微量ガス導入機構装備センサー評価装置を構築した。そしてこの装置を用いて、NH3に対してガス種選択性をもつことが報告されているCoモノマーポルフィリン(CoOEP)を半導体単層カーボンナノチューブ(s-SWNT)薄膜トランジスタに担持させたセンサーを作製し、NH3に対する応答特性を評価した。CoOEP担持s-SWNTの5 ppm のNH3に対するセンサー応答(コンダクタンスの変化率)は、CoOEP担持前と比較して、担持後はNH3に対する応答が約9倍向上し、半導体金属混合SWNTを用いた先行研究と比較して約8倍向上した。これにより、NH3に対するCoOEP担持半導体SWNTの有用性を実証した。さらに、ゲート特性の結果より、センサーがゲート中性点近傍で低電流動作をしていたため、硝酸によるpドーピングを用いて、トランスコンダクタンスが大きい状態での動作を実現させた。その結果、NH3に対する応答がさらに約1.6倍 (先行研究と比較して約14倍) 向上した。センサー応答の濃度依存性を測定した結果、NH3に対して200 ppbまでの低濃度の検知が可能であることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
標準ガス希釈器(希釈率:1/1000)を導入し、濃度制御極微量ガス導入機構装備センサー評価装置を構築した。これにより、市販のNH3標準ガスの最低濃度1ppmのガスを用いて、1ppbまでの濃度測定が可能になった。 モノマーポルフィリンの半導体単層カーボンナノチューブへの担持においては、半導体単層カーボンナノチューブ薄膜トランジスタをモノマーポルフィリン溶液に浸漬させる方法が有効であることがわかった。さらに、ポルフィリン浸漬後の試料をポルフィリン可溶溶媒で濯ぐことにより、過剰なポルフィリンが除去されて感度がより高まることが分かった。 単層カーボンナノチューブトランジスタのトランスデューサとしての性能を高めるため、半導体単層カーボンナノチューブ(s-SWNT)薄膜(>99%)を採用した。これにより、Coモノマーポルフィリン(CoOEP)を担持した単層カーボンナノチューブ薄膜トランジスタのNH3に対するセンサー応答が先行研究に比べて大幅に向上(約8倍)した。さらに、トランスコンダクタンスが大きな領域で動作するように、半導体単層カーボンナノチューブ薄膜に対して硝酸蒸気曝露によるpドーピングを行った。適切な曝露時間調整で、動作電流の増加とセンサー応答量の増加(約1.6倍)を実現した。 以上の工夫により、先行研究と比較して、約14倍のNH3に対するセンサー応答量を実現し、また、最低濃度200ppbまでの測定が可能であることを示した。
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今後の研究の推進方策 |
① NH3に対するCoOEP担持半導体SWNTの分子識別能の検証を行うために、他のガス(CH4、アセトン、エタノール、NO)に対するセンサー応答を測定し比較する。 ② 半導体単層カーボンナノチューブ(s-SWNT)薄膜トランジスタのトランスデューサとしての性能を安定化(ベース電流の増強によるS/N比の改善)させるため、SWNT薄膜の高密度化・均一化を図る。また、センサーの回復手法として、あるいは応答・回復速度を向上させる手法として、UV光照射やヒーター加熱を検討する。 ③ 他のセレクター分子として、s-SWNTとより強い相互作用が期待されるダイマーポルフィリンを採用し、s-SWNT上で高被覆率が得られるように溶媒(ジクロロメタンなど)の選定を行う。 ④ 半導体SWNTに担持させるポルフィリンの中心金属をCo以外(Cuなど)に変更し、NH3に対する応答を測定する。中心金属の種類によりNH3の吸着エネルギーを調整し、測定可能な濃度範囲を実用的な範囲(呼気診断に必要とされるNH3の検知濃度は100ppb~10ppm)に拡大する。 ⑤ 次の検知対象ガスとして、アセトンを取り上げ、局所密度汎関数法による分子設計などから、アセトンに対する分子識別能を持つ中心金属を探索し、その結果に基づいて、金属ポルフィリン錯体担持センサーを作製・評価する。
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