研究課題
本研究では、単結晶金属酸化物ナノワイヤ表面上に熱・化学的に安定な多点分子認識空間(=分子指紋)を形成した分子指紋ナノワイヤを独自技術により創成し、分子指紋の構造・化学特性に基づく分子吸着識別機能、及び分子指紋と標的分子の化学的結合力に基づく分子脱離識別機能の機能融合により従来原理的に困難であった混合分子系における標的分子の検出・識別を可能にする新規分子識別法を提案・実証することを目的としている。当該年度の研究実績を以下に示す。①高堅牢性分子指紋ナノワイヤにおける分子認識機能設計:ゾルゲル反応を介して単結晶金属酸化物ナノワイヤ上に高堅牢性分子指紋ナノワイヤを構築し、多成分混合分子群における標的分子の吸着選択性を検証した結果、分子指紋-ナノワイヤ界面を介した分子指紋層への化学ドーピング量の増加と共に標的分子に対する認識能が向上することを見出した。更に、分子指紋形成の固相成長プロセスに関して焼成温度の影響を詳細に検証した結果、適切な温度領域で2段階焼成を行うことで劇的に分子認識能が向上することを見出した。②高堅牢性分子指紋形成メカニズム:化学ドーピングされた元素に対する標的分子の配位能力が分子指紋形成の鍵であるとの仮説の元、異なる配位能力を有する標的分子を用いて分子指紋形成を試みた結果、配位能力が低い標的分子に対しては分子指紋形成プロセス導入による分子認識能の向上は見られなかった。③ナノワイヤ・センサ統合デバイスの創製:分子指紋ナノワイヤ-センサ統合デバイスを構築し、分子センシング性能を検証した結果、極めて高い分子濃縮効果が得らえ、当初の想定を大きく上回る分子センシングの高感度化実現の可能性を見出した。
1: 当初の計画以上に進展している
分子指紋ナノワイヤ-センサ統合デバイスを構築し、分子センシング性能を検証した結果、当初の想定を大きく上回る分子センシングの高感度化実現の可能性を見出したため。
本年度までに得られた分子指紋形成メカニズムを更に詳細に理解するために、ナノワイヤ表面における各種分子群の吸着・反応・脱離挙動の理解に加えてX線吸収微細構造(XAFS)による分子指紋形成プロセスの追跡を行う。更に、これまでの枠組みを超えて材料展開を行い、多様な高堅牢性分子認識材料の創製を目指す。加えて、本年度までに原理検証を行った分子指紋ナノワイヤ・センサ統合デバイスの分子識別・濃縮機能に関して、その限界探索と最適化を行うと共に従来センサデバイスでは実現困難なセンサ性能の実証を目指す。
すべて 2020 2019 その他
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 3件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 3件、 招待講演 3件) 備考 (1件)
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