研究課題/領域番号 |
18H01835
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
畠山 一翔 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 研究員 (30773965)
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研究分担者 |
伊田 進太郎 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 教授 (70404324)
木田 徹也 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 教授 (70363421)
伯田 幸也 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, ラボチーム長 (30250707)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ナノシート / ガス分離膜 / 酸化グラフェン |
研究実績の概要 |
本年度は、1)ナノシートの作製・構造設計、2)ナノシートの薄膜化・機能設計、3)分離性能評価、を進めた。 1) では、酸化グラフェンを様々な温度で水熱処理することで、酸化度の異なる酸化グラフェン分散液を得ることを試みた。結果として、100~180 ℃で水熱処することで、酸化グラフェンの酸素含有量を16~32 atm%の範囲で制御することに成功した。これにより、酸化グラフェンから成る薄膜の層間隔を約0.34~0.84 nmで調整することが可能となり、層間を通したガス透過特性を制御するための技術を確立した。また、水熱処理により得られた酸化グラフェンは、処理前の酸化グラフェンと比較して、多くの”しわ”を含むシート構造を有していることを発見した。これらの”しわ”の中をガスが透過することで、他の材料にはないユニークなガス透過特性を実現できる可能性がある。また、それまで不可能とされてきた有機溶媒に酸化グラフェンを高分散させる技術も開発し、薄膜作製の操作性を格段に向上させることにも成功した。 2) では、高いガス透過速度を得るために必須の技術である、極薄のナノシート薄膜の作製技術の開発を行った。LB法の手法を改良した、酸化グラフェン水分散液にメタノールを加え、70 ℃で溶媒を蒸発させる手法を見出し、20 nm以下という極めて薄い酸化グラフェン薄膜を支持膜上に作製することに成功した。同様の手法を用いることで、1)で得られた酸化度の異なる酸化グラフェンを用いた薄膜を作製することにも成功し、層間隔・構造が異なる薄膜を作製する技術を得た。また、酸化グラフェンと酸化物ナノシートの複合化膜の作製にも成功した。 3) では、Q-massを用いた、微量の透過ガスを分析可能な装置の立ち上げに着手した。しかし、ターボポンプの故障など予期せぬトラブルの発生により、分離性能評価を行うまでには至らなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ガス透過評価装置の立ち上げが遅れており、分離特性の評価を行うことができなかったことから、やや遅れていると判断した。しかし、昨年度はナノシートの作製・構造設計、ナノシートの薄膜化・機能設計について上記のように技術を蓄積することができた。透過性能評価は、装置が立ち上がれば次々と行え、研究の進展速度はサンプル設計段階が律速であると考えられることから、本年度の遅れは大きな問題にならないと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は装置の立ち上げをただちに行い、薄膜のガス透過特性を順次評価していく。測定により算出される透過速度を、セル温度、気体の動的半径に対してプロットすることで、気体透過の透過メカニズムを特定する。特定したメカニズムから、薄膜を適切に設計し、再度ガス透過特性を評価する。この作業を繰り返すことで、目的の特性を有するガス透過膜の開発を目指していく。混合ガスを用いることで、ガス分離性能評価も順次進めていく。同時に、実用化を見越し、ナノシートの大量生産技術の開発も行っていく。
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