研究課題
蛍光性ナノダイヤモンド(FND)内部に存在する窒素空孔中心(NVC)の電子スピンはms = 0 と縮退した ms = ±1の2つ量子状態を有しており、この量子状態間の磁気共鳴周波数(D)は温度によって変化する。すなわち、このDを当研究室で開発した光検出磁気共鳴(ODMR)顕微鏡で計測することによって、FND周辺の温度を知ることができる。また、FNDは生体適合性が高く細胞毒性を示さないことから、新しい細胞内温度センサーとして期待されている。本年は細胞内の熱伝導を明らかにする研究に取り組んだ。ポリドーパミン(PDA)はナノ粒子表面に容易に均一な薄膜構造を形成し、可視光を照射するとによって発熱することが知られている。まず、PDAコートされたFND(FND-PDA)を合成し、その発熱能を評価した。その結果、PDAによってナノスケールに発熱した熱を、同じくナノスケールの温度計FNDで検出することに成功した。発熱は1度程度の精度でコントロールすることができ、光照射を繰り返してもPDAの構造が壊れることはなく発熱の能力が変化することはなかった。FND-PDAはナノ領域の熱伝導を計測することが可能となる。その原理は、熱伝導性の高い水中ではPDAから発せられた熱は水に逃げFNDの温度は上がりにくく、逆に空気中では熱は逃げずFNDの温度は上がりやすくなるというものである。FND-PDAを細胞内に取り込ませ、熱伝導率を測定したところその値は0.11でありこれは水(0.61)よりも低く、空気(0.026)よりも高く、ミネラルオイル(0.13)と同程度であった。細胞内の熱伝導率は水と同程であると言われていたが、本研究では、細胞内ナノ領域の熱伝導率を計測できるプローブの開発により両者が異なることを世界で初めて明らかにした。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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Science Advances
巻: 7 ページ: eabd7888
10.1126/sciadv.abd7888
Journal of the American Chemical Society
巻: 142 ページ: 7542-7554
10.1021/jacs.0c01191
https://trais-out2.sakura.ne.jp/protein-nanobiology/research/