研究実績の概要 |
本研究では、局所的な化学・電気刺激、またそれらの複合刺激が細胞機能に与える影響を明らかにするとともに、生体様組織構築を可能にする細胞培養プラットフォームのための電気化学デバイスを開発する。また、細胞計測を同時に行えるシステムを組み込むことで、スマート細胞培養プラットフォームとして完成させる。本研究を通して、Organs on a Chipといった動物代替用細胞チップとして本プラットフォームを完成させ、薬剤評価モデルへの応用を達成する。 昨年度は細胞計測に関する2報の論文(ACS Sensors, 5(3), 740-745, 2020:Electrochimica Acta, 340, 135979, 2020)を報告した。これらの論文では、バイポーラー電気化学に基づく3次元培養細胞の呼吸活性評価や血管構造を導入した生体様組織の電気化学計測に関する報告を行った。この他にも、400個の電気化学センサを組み込んだ電気化学デバイスを用いた、細胞活性の電気化学イメージングや細胞刺激を実施した。細胞活性の電気化学イメージングに関しては、現在、論文準備中である。 さらに本年度では、細胞培養に向けたハイドロゲルの電解析出法に関する報告を行った(Chemistry Letters, 48, (2019), 1178 -1180.)。この他に、局所電気化学反応を接着剤のように用いることで、3Dハイドロゲルを構築する新しい手法を開発した。この研究成果は現在、論文執筆中である。これら手法を用いることで、電気化学デバイス上でのハイドロゲル内の細胞培養が期待できる。このように本年度は様々な細胞培養プラットフォームを開発した。 また、該当分野の2報のreviewを報告した(Frontiers in Chemistry, 7, 396, 2019:Advanced Biosystems, 1900234, 2020)。特に2報目では、細胞培養に向けた電気化学プラットフォームとバイオファブリケーションを述べており、本研究成果の一部を紹介している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
昨年度は5報の学術論文を報告しており、このことから順調に研究が進んでいるといえる。初年度と合わせると13報の学術論文を報告しており、熱心に研究成果を社会に発信している。いくつかの論文は国際共著であり、該当の研究の国際コミュニティーの形成が期待できる。 電場印加による血管形成変化が観察できており(論文投稿準備中)、当初の予定通り研究が進んでいる。特に、交流電圧の印加に基づく3次元培養での血管形成変化はほとんど報告されておらず、本研究の独創性が高い。報告した研究成果の中で、2つの雑誌でcoverに選ばれており(ACS Sensors, 5(3), 740-745, 2020)、このことからも評価が高い研究が行われたと考えられる。特に細胞計測に関しては、申請書で記載した以上の研究成果が出ている。申請者を含む指導学生の学会発表の件数は26件であり、学生発表賞が2件あった。このことから研究成果が予想以上に出ていることが分かる。以上のことから、当初の計画以上に進呈しているといえる。
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