研究実績の概要 |
本研究では、電気化学に基づく細胞刺激や電気刺激、またそれらの複合刺激が細胞機能に与える影響を明らかにするとともに、生体様組織構築を可能にする細胞培養プラットフォームの開発を目指した。また、細胞計測を同時に行えるシステムを組み込むことで、スマート細胞培養プラットフォームとして完成させることを目的とした。本研究を通して、Organs on a Chipといった動物代替用細胞チップとして完成させ、薬剤評価モデルへの応用を達成する。 昨年度は細胞計測に関する1報の論文(Biosensors and Bioelectronics, 181, 113123, 2021)を報告した。この論文では、電気化学発光現象を用いた3次元培養細胞の呼吸活性評価に関する報告をした。このような呼吸活性計測システムの例は、世界で初めてである。従来の電極アレイデバイスを比べ、処理能力が数百倍向上できる可能性があり、今後の発展が期待できる。また、直流電圧印加による刺激が細胞分泌を誘導している予備データが出ており、この結果から電気化学チップデバイスによる細胞機能制御が期待できる。さらに交流電圧印加によるシグナル伝達物質の分泌も確認されており(unpublished data)、さらなる検討を実施中である。 この他に微小流路デバイスの電気化学センサを組み込んだデバイスを開発した。イオン電流に基づく3次元培養血管モデルの評価や、多孔電極を用いた血管細胞のシグナル伝達物質の評価に成功した。これらは現在、論文投稿準備中である。 昨年度でも、細胞培養に向けたハイドロゲルの作製に関する報告を行った(Journal of Bioscience and Bioengineering, 130, , 539-544, 2020)。これら手法を応用すればデバイス表面修飾が可能であり、電気化学デバイス上での細胞培養プラットフォームへの展開が期待できる。このように細胞培養プラットフォームに向けた要素技術も開発した。
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