従来の薬物輸送システムは、薬を運搬体に内包させ、がんなどの疾患部へ送達する。しかし、運搬体からの薬の漏出に伴う副作用と薬効低下が問題となっており、安全かつ治療効果の高い、新機軸の医療戦略が求められている。本研究は、抗がん剤などの薬を必要とせず、がん局所で薬を合成する高分子ベシクルデバイスの創製を目的として研究を行った。その結果、特定の生体環境下で分子透過性を示す高分子ベシクルの開発や、分子透過メカニズムの解明ならびに分子透過に必要な分子設計指針などを明らかにした。さらに、細胞培養環境下においても、酵素を封入した高分子ベシクルデバイスが機能し、がん細胞を死滅させることが可能であることを見出した。
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