研究課題
本年度では、極薄ナノポアセンサの空間分解能評価及び最適化の実施を目的とした。まず、ナノポアセンサの時間分解能を決定する因子を詳細に調べた。すでにデバイスのキャパシタンスが電流応答を鈍化させることは確認してきていたが、ナノポア抵抗の寄与は明らかではなかった。特に、分子サイズの極小ナノポアになると、ナノポア抵抗はどうしても大きくなるため、イオン電流応答の鈍化は避けられない課題となることが予測されていた。そこで、ナノポア外部に微小流路を付与し、その流路構造を変えることでナノポア外部の抵抗成分を変化させ、その結果イオン電流応答がどの程度鈍化するかを調べた。すると、ナノポアセンサの時間分解能は、ナノポア内部ではなくナノポア外部の抵抗に大きく依存することが新たに分かった。これにより、極薄ナノポアセンサの時間分解能向上のためのデバイス構造並びに実験条件の設計指針を立てることができた。また、ナノポア内における能動的な粒子の速度制御を可能にするサラウンドゲートナノポアを新たに開発することにも成功した。そして、ポリイミド被覆極薄ナノポアを用いて、urchin、プレート、球など、様々な形状の金ナノ粒子の1粒子検出を実施した。現在、得られたイオン電流波形から、当該ナノポアセンサの空間分解能を推定しているところである。さらに、この高感度ナノポアセンサを応用し、観測できる1粒子泳動ダイナミクスから1粒子の質量が測定可能であることを明らかにした。この新しいセンサ原理は、当該ナノポアセンサが、1粒子径上解析だけでなく、TOF型1粒子質量分析にも応用可能なものであることを示唆している。
2: おおむね順調に進展している
極薄ナノポアを用いた多種形状ナノ粒子の1粒子検出に成功しており、得られたイオン電流波形を指標としたナノポアセンサの空間分解能の推定に着手できているため。
今後は、サラウンドゲートナノポアを導入するなどして、タンパク質の移動速度をコントロールした状態で、イオン電流応答の観測ならびに1分子構造推定を遂行する。
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