研究課題
創薬分野では非臨床試験において、実験動物を使ったin vivo試験や培養細胞を用いたin vitro試験が実施されているが、ヒトと実験動物の種差やin vivoとin vitroの乖離に起因する医薬品開発コストの増加が社会的問題となっている。そこで本研究では、この乖離を補完するための高次in vitro系として、マイクロ流体デバイス技術を活用した機能統合型Body-on-a-chipの構築を目指す。具体的には、本研究では医療・創薬分野への応用を見据えつつ、生物学的に新しい知見を得るための高次in vitro系として、①ADME(吸収(Absorption)・分布(Distribution)・代謝(Metabolism)・排泄(Excretion))機能集積化、②生理学的パラメータ再現、③マイクロ電気化学センサ集積化 を実現する機能統合型Body-on-a-chipを構築する。初年度となる2018年度では本研究の根幹であるOrgans-on-a-chipの設計において生理学的パラメータを再現することの意義について検討した。その結果、Organs-on-a-chipのようなin vitro実験系であってもその流路デザインにおいて生理学的パラメータを再現することが薬効毒性評価において極めて重要であることが示唆された。このほか、他の多臓器モデルとして、肝臓・筋・脂肪組織モデルを集積化したデバイスの設計・作製にも着手している。Organs-on-a-chip集積型のマイクロセンサの開発については、研究分担者の東京大学小森らと協力しながらグルコースオキシダーゼ(GOD)を利用するマイクロ流体デバイスに集積化が可能なマイクロバイオセンサを開発し、細胞動態のオンライン計測を実現した。
2: おおむね順調に進展している
初年度となる2018年度では、本研究の根幹であるOrgans-on-a-chipの設計において生理学的パラメータを再現することの意義について検討した。具体的には、生理学的な血流入量比や臓器体積比を再現する肝臓と肺の二臓器集積型デバイスを開発し、抗がん剤を用いてその効果を検証した。この結果、デバイス上で各臓器モデルに流入する培養液量が変化することによって、抗がん剤の薬効が異なることが明らかになった。すなわち、Organs-on-a-chipのようなin vitro実験系であってもその流路デザインにおいて生理学的パラメータを再現することが薬効毒性評価において極めて重要であることが示唆された。このほか、他の多臓器モデルとして、肝臓・筋・脂肪組織モデルを集積化したデバイスの設計・作製にも着手している。Organs-on-a-chip集積型のマイクロセンサの開発については、研究分担者の東京大学小森らと協力しながらグルコースオキシダーゼ(GOD)を利用するマイクロ流体デバイスに集積化が可能なマイクロバイオセンサを開発した。今年度中に細胞培養部とセンサ部を有する肝臓モデルデバイスを作製し、HepG2細胞の24時間のオンライン動態計測を実現した。
今後はOrgans-on-a-chipを用いて得られた実験データを元に数理モデルを構築し、生理学的パラメータの有用性の検討を進める予定である。2019年度中には肝臓・筋・脂肪組織デバイスのプロトタイプを完成させて、評価実験に着手する。また、その他の臓器機能を集積化する多臓器モデルを開発するととともに、それらの機能評価には、株化細胞だけでなく、初代培養細胞やiPS由来細胞の利用を念頭に置く。Organs-on-a-chip集積型センサについては、これまで開発してきたグルコースオキシダーゼを用いたグルコースセンサは寿命や感度に課題が残っているため、今後はグルコース脱水素酵素を用いたマイクログルコースセンサを開発し、その評価を実施していく方針である。
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