研究実績の概要 |
有機半導体単結晶をゲイン媒体として用いた分布帰還型レーザーでは,同じ有機半導体材料と回折格子を用いても素子ごとに0-1振電遷移が発振したり,0-2振電遷移が発振したりと発振波長が異なり,発振波長の設計ができないという問題点があった.今年度はこの問題を解決すべく光励起による実験と有限要素法を用いたシミュレーションによる研究を行った. 有機半導体材料としては発光の内部収率と電子・正孔の電界効果易動度がいずれも比較的高い5,5"-bis(biphenyl-4-yl)-2,2':5',2"-terthiophene(BP3T)を用い,アルゴンガスをキャリアガスとした物理気相輸送法により単結晶を作製した.SiO2膜付きのシリコン基板上にポリスチレンのトルエン溶液をスピンコートし,ポリスチレン膜で被覆したのち,熱ナノインプリント法で回折格子を作製した.その上にBP3T単結晶を張り付け,窒素レーザーを用いた光励起によりレーザー発振スペクトルを測定した.多数の単結晶について測定を行ったところ,発振波長が大きく分布することが分かった.さらに単結晶の厚さを段差計を用いて測定したところ,発振波長は単結晶厚さに依存して系統的に変化することが分かった.有限要素法を用いた光導波のシミュレーションはこの実験結果をよく再現し,発振波長の系統が複数存在することも説明することができた. 本研究により,有機半導体を用いた分布帰還型レーザーで発振波長の予測・制御が行えるようになった.
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