研究課題/領域番号 |
18H01853
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
橋本 顕一郎 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 准教授 (00634982)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 電荷秩序 / 電荷ガラス / 強相関電子 / 示差走査熱量測定 / 幾何学的フラストレーション / 有機導体 / TTT図 |
研究実績の概要 |
近年、物性物理学の分野において、有機固体結晶中の伝導電子が、強い電子相関と幾何学的フラストレーション効果により、ランダムな電荷分布・電荷配置のまま凍結した電荷ガラス状態が見出され、大きな注目を集めている。電荷ガラス状態では、わずかな外場摂動により巨大非線形伝導や自発的電流振動などのスイッチング現象が観測されており、電子系の自発的な相分離による本質的不均一構造に由来するナノスケールヘテロ構造との関連性が指摘されている。 本研究課題では、二次元三角格子構造をもつ強相関有機導体θ-(BEDT-TTF)2X(Xは1価のアニオン分子)で実現する「電子のガラス化」と「巨大非線形・非平衡現象」の関係を明らかにすることを主たる研究目的としつつ、強相関π電子の非線形・非平衡現象を利用したデバイス応用までを見据えた研究を行っている。そのために、分子性有機導体を中心とした新規ガラス物質の開拓や、薄膜試料の合成とレーザー加工による微細化・デバイス化などの研究手法を駆使して、基礎研究から応用研究までを網羅した包括的な研究を計画・実施している。 当該年度は、エックス線照射により人為的に欠陥を導入したθ-(BEDT-TTF)2MZn(SCN)4 (M = Rb)に対して、示差走査熱量(DSC)測定を行い、温度-時間-変態(TTT)図を作成した。その結果、不純物が電荷の結晶化を妨げることを明らかにした。これらの成果は、電荷ガラス/結晶/液体状態を利用したメモリ材料の実現に向けた指針になると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究成果として、欠陥を人工的にど運輸した試料に対してTTT図を作成することで、試料内の欠陥が電荷の結晶化を妨げ、一方でガラス化を促進することを明らかにしている。こららの成果は、電荷ガラス/結晶/液体状態を利用したメモリ材料の実現に向けた大きな指針になると考えられるため、現在までの進捗状況として、概ね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
強相関電子のガラス化と結晶化を利用したメモリ機能の開拓には、微細化したメモリ素子のナノ電子物性に関する情報が必要不可欠である。そのために、今後の研究では、ナノメートルスケールで電荷ガラス相の電子状態を実空間観察する測定を行う予定である。
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