研究課題/領域番号 |
18H01856
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
石井 宏幸 筑波大学, 数理物質系, 助教 (00585127)
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研究分担者 |
岡本 敏宏 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 准教授 (80469931)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 熱電変換 / シミュレーション / 有機半導体 |
研究実績の概要 |
研究代表者は、今までミクロンスケールの有機半導体の電子伝導物性(移動度)を第一原理計算を基に原子レベルから定量的に評価可能にする「時間依存波束拡散法」を開発してきた。この手法を用いて強い電子-フォノン相互作用が支配する有機半導体の電子伝導機構を解明してきた。このように有機半導体の電子伝導に関しては理解が深まってきたが、エネルギーハーベスティング技術の1つとして最近注目されている熱電変換に関してはほとんど理解が進んでいないのが現状である。 本研究課題では、「時間依存波束拡散法」をさらに拡張し、熱電変換物性も計算可能にさせる。そして、これを有機半導体に適用し、電子-フォノン相互作用が支配的な有機半導体の熱電物性を調べ、その変換機構を解明することが目的である。 ただし熱電物性における電子-フォノン相互作用(非弾性散乱)の効果は計算が難しく過去の成功例もあまりないため、不純物散乱(弾性散乱)を最初に考慮する。当年度では、弾性散乱を対象として「時間依存波束拡散法」の枠組み内で、熱電変換物性を計算するためのアルゴリズムの構築、大規模計算可能なプログラムへの実装を行った。まず最初に、この計算方法を単純な2次元正方格子モデルに適用した。簡単なガウス分布型のランダムポテンシャルを考えた。開発したプログラムの動作確認として、解析解との比較を行った。これにより、様々なキャリア濃度、室温付近の温度領域において、解析解を良く再現する結果を得た。これは、開発した計算理論、およびプログラムが正しいことを意味する。ここまでの研究成果を論文として公表するための準備を進めている。 研究分担者の岡本とは、月1回ほどのペースで、最新の実験結果の情報を提供してもらい、情報交換を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、熱電変換物性を計算するためのアルゴリズムと、大規模計算プログラムへの実装ができることが確認できた。今後の実際の材料への適用や、電子-フォノン相互作用の導入の基盤技術は整ったので、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後の大きな方針は、電子-フォノン相互作用(非弾性散乱)の導入である。 この計算は過去の文献でも実例が少なく、計算結果の検証も慎重におこなわなければならないと思われるが、まずは研究計画にのっとって研究を進めていく。
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