研究課題
本研究は、トポロジカル結晶絶縁体(TCI)であるSnTeにおいて外場の印加による対称性の破れがトポロジカル表面状態にどのような影響を及ぼすかを明らかにし、外場によるトポロジカル表面状態の制御に基づくデバイス機能実現の可能性を探索することを目的としている。今年度は以下の研究を行った。(1) 強磁性体との接合界面における磁化発現SnTe上に磁性絶縁体であるEuSを積層したヘテロ構造を作製し、トポロジカル表面状態に誘起される界面磁化を偏極中性子反射率(PNR)測定により調べた。界面に平行に印加した磁場と平行・反平行にスピン偏極した中性子に対する反射率スペクトルを測定し、磁化の深さ方向のプロファイルを解析した。その結果、近接効果により界面に磁化が誘起され、SnTe側に深さ7nm程度まで磁化が浸透していることが判明した。この界面磁化の誘起は、トポロジカル表面状態のディラック電子を媒介としたEuSの4f電子の磁気モーメント間の相互作用によるものと考えられる。(2) SnTeにおける時間分解角度光電子分光(TARPES)測定による非占有状態の観察SnTe(111)面に対してパルスレーザー励起による時間分解角度光電子分光(TARPES)測定を行い、非占有状態のバンドおよびキャリアのダイナミックスを調べた。その結果、非占有側に位置するトポロジカル表面状態の観測に成功し、そのディラック点の位置は従来の研究報告と異なり、バルクの価電子帯の直上に位置することが判明した。また、バルクの価電子帯が巨大ラシュバ効果によりスピン分裂していることを見出した。この巨大ラシュバ分裂の起源に関し、格子歪との関係を考察した。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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