研究課題
本研究では、エピタキシー技術によって実現されたルテニウム酸化物薄膜・接合を利用した超伝導状態の解明と、類似のルテニウム酸化物超伝導状態の実現とそれらの比較研究を通じた超伝導メカニズムの研究を目的としている。層状ペロブスカイト型構造をもつルテニウム酸化物超伝導体Sr2RuO4については、転移温度が1.2Kを超える高品質薄膜にレーザー微細加工を施すことで弱結合型のジョセフソン接合を作製した。これにより、IcRn積が大幅に向上したオーバーダンプ型の接合が得られ、特にこれまでのバルク単結晶を用いた接合は全てSr2RuO4とs波超伝導体との接合となっていたが、Sr2RuO4同士のジョセフソン接合作製に初めて成功した。ジョセフソン臨界電流の磁場依存性は時間反転対称性を保った振動パターンとなっており、IcRn積の温度依存性はAmbegaokar-Baratovの式で表されるs波ともカイラルp波とも異なる非自明なものとなっていることが明らかになった。また、別の結晶構造をもつルテニウム酸化物についても、バルクでは金属であるが、薄膜化によりエピタキシャル歪みを加えることで初めて超伝導体化することに成功した。
1: 当初の計画以上に進展している
層状ルテニウム酸化物超伝導体の薄膜・デバイス化に加えて、別の結晶構造を持つルテニウム酸化物についても薄膜化による超伝導が初めて実現され、当初の狙いを大きく広げてエピタキシー技術による超伝導体の研究が進展している。
層状ペロブスカイト型構造とは別の結晶構造を持つ新たなルテニウム酸化物超伝導体についても、面内に異方性のあるエピタキシャル応力や等方性を保ったエピタキシャル応力を導入し、超伝導発現のメカニズム解明を進める。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 6件、 招待講演 7件)
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