走査トンネル顕微鏡(STM)は原子スケールで電子状態を可視化する顕微鏡である。一方、原子間力顕微鏡(AFM)は原子位置や分子骨格を可視化する顕微鏡である。さらに、走査トンネル電位計(STP)は試料にマクロな電流を流しながらナノスケールで電気伝導をマッピングする手法である。本研究計画ではこれらを組みあわせ、原子や分子や単原子層を対象に、それらの電子状態をSTMで結合状態をAFMで、さらに電気伝導状態をSTPで原子スケールで可視化することを最終目標とした。 東北大学との共同研究により、Unisoku社製の走査トンネル顕微鏡の室温における立ち上げが完了した。20点程度の超高真空備品を取り付け、加熱機構を整備することで実験に必要な超高真空を得ることができた。また、走査プローブ顕微鏡のコントローラーを接続し、室温で試料の顕微鏡像を得ることに成功した。引き続き、低温における実験の準備が進んでいる。また、大阪大学との共同研究により、低温型原子間力顕微鏡の立ち上げを完了し、原子分解能像を得ることができた。さらに、奈良先端大との共同研究により、Omicron社製低温4探針STMの立ち上げが順調に進んでいる。最終目標に必要な要素技術が一つ一つ確立しつつある。 STMとAFM研究を応用したSi4単体のAFMによる原子スイッチの研究成果が、日本物理学会誌に掲載された。その過程で、双子Si4-Si4原子スイッチの研究に関する解析と考察を最終段階まで進め、論文の執筆が進んでいる。 また、本研究計画にプラスの影響を与える共同研究も広がった。STPの試験でも用いるAg(111)超薄膜上での量子の研究[論文Surface Science]、インジウム表面超構造の金属絶縁体転移のドーパント操作[論文Journal of Physics]などがあった。
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