研究実績の概要 |
原子精度のナノ立体造形技術を構築し、僅かな外場で金属-絶縁体相転移(MIT)に伴う巨大抵抗変化を示す遷移金属酸化物VO2, NdNiO3のナノ構造化を実現した。MIT発現の最小単位であるナノ電子相の一次相転移に由来した急峻抵抗変化の取り出し、臨界点(転移点)分布、ナノ電子相サイズの関係を定量的に明らかにし、試料形状などの精密制御により単一ナノ電子相の巨大・急峻MITの操作方法を確立した。 独自の原子レベル立体造形技術をVO2へと適応し、ナノ電子相閉じ込め効果を制御することでVO2ナノ構造体での物性研究を展開した。VO2の細線構造(線幅: 600 nm、電極間距離: 20 nm)において、単一細線で測定した抵抗の温度依存性曲線が完全なステップ変化を示し、単一電子相の相転移の抽出に成功した。単一ナノ電子相の、昇温過程での52℃(降温過程での49℃)でステップ変化:すなわち絶縁体→金属(金属→絶縁体)の一次相転移がはっきりと観察された。従来法では不可能な数十nmサイズの極微ナノ細線構造において、物性の起源であるナノ電子相転移特性の直接評価と、電子相数制御による応答性の急峻化を実現したといえる。 ナノ電子相1個の理想的な一次相転移特性を基に、統計的MITモデルによってマクロサイズの試料が示すなだらかな抵抗変化を、矛盾なく記述できることを明らかにし、相転移点の分布特性を明らかにした。本質的不均一の起源、すなわち電子相での転移点の分布の起源は、試料の不完全性(欠陥、化学組成分布など)によるが、電子相ナノ構造の核形成が昇温/降温過程の速度に依存し、それがマクロスコッピクにはナノ電子相サイズとMIT温度分布として現れるという相転移ダイナミクスの本質に迫る実験結果が得られた。
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