研究課題/領域番号 |
18H01880
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
白澤 徹郎 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 主任研究員 (80451889)
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研究分担者 |
増田 卓也 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 先端材料解析研究拠点, グループリーダー (20466460)
Voegeli Wolfgang 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (90624924)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 貴金属触媒 / 表面分析 / 放射光分析 / 赤外分光 / ガス触媒反応 |
研究実績の概要 |
前年度に発生した回分式試料セルの真空リークおよび試料加熱機構の不良を解消し、白金原子層で被覆したパラジウム(111)表面のX線CTR散乱法による構造解析を行った。パラジウムを白金原子層で被覆することで、酸素の2p電子軌道と相互作用するパラジウムのd電子軌道の位置が変化して酸素還元反応活性が向上することが予測されていたが、実際の表面構造と酸素還元反応活性との関係は明らかにされていなかった。白金を約1原子層と約2原子層蒸着した試料について解析を行った結果、白金原子はパラジウム表面を単純に被覆するだけでなく内部に侵入するとともにパラジウム原子を置換して結晶格子位置におさまることが分かった。白金原子の置換による面内方向の格子定数の変化は検出されず、面直方向に最大約3%格子伸長することが分かった。白金原子を約1原子層蒸着させた試料については、パラジウム最表面層は約70%しか被覆されておらず、白金原子を約2原子層蒸着させることでパラジウム最表面層が全て白金原子で被覆されることが分かった。別途測定した酸素還元反応活性において、白金を約2原子層蒸着させたときに最大になることと対応していると考えられ、今後、電子状態計算との比較によりd電子軌道の変化と表面構造との相関が明らかになると期待される。 フロー式小型反応室の立ち上げを前年度に引き続いて進め、放射光を用いたその場ガス触媒反応分析を行うためのガスフローシステムおよび質量分析システムを整備した。また、フーリエ変換赤外分光光度計システムの立ち上げについて、その場観察用試料セルについて外部光を高感度検出するためのMCT検出器を整備し、白金(111)表面に吸着した酸素種の検出に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
その場観察用フロー式小型反応室の製作およびフーリエ変換赤外分光光度計システムの立ち上げがやや遅れており、ガス触媒反応のその場分析が当初の予定より遅れていいる。 他方、白金被覆パラジウム表面の表面構造解析が進んでおり、表面構造と酸素還元反応活性の相関についての理解が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
パラジウム(111)単結晶表面を白金で被覆した表面合金触媒について、白金の被覆率を3原子層および4原子層に変化させたときの表面構造をX線CTR散乱法を用いた精密解析によって系統的に調べ、CO酸化触媒活性との関係を明らかにする。さらに、表面X線回折と質量分析測定の同時オペランド観察および赤外吸収分光のその場観察によってCO酸化触媒反応中の表面構造および吸着分子の状態を明らかにし、反応の全容について知見を得る。
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