本研究ではソフトマテリアルの粘弾性測定の空間分解能をマイクロメートル域にまで向上させ、かつその分布を2次元的にとらえることができるレオロジー顕微鏡を作製する。このシステムでは独自に開発した電磁駆動回転方式の粘弾性測定手法を微小回転プローブに適用することにより空間分解能をこれまでに比して飛躍的に向上させる。この手法は試料中に配置した球状のプローブに遠隔にトルクを印加し、これに対する運動から非接触で粘性を決定できるという他の力学物性測定装置にはない特徴を有している。この技術と顕微画像解析手法とを組み合わせてソフトマテリアル内部の複数の微小プローブの運動を観察し、レオロジー的な性質の分布を画像として取得する。最終的には安価で簡便な汎用レオロジー観察装置として市場に供給することを目標とする。本年度は微小な細孔を有する基板により隔てられた系を用いて、流体の並進運動量が拡散する様子を観察することにより、局所的な粘性の分布を測定する試みを行った。基板で隔てられた上下二層構造の下の部分のみにずり流動を印加し、基板に設けられた細孔からずり流れ場が上の層に染み出す様子を時間分解で観察することにより、運動量の拡散定数すなわち動粘度の空間分布を測定できる。実験によりその時間・空間分解能を実測してレオロジー顕微鏡に応用可能であることを確認した。これと並行して超低ずり速度域における粘性を測定する手法の開発も行った。この成果により、純水程度の低粘性を毎秒1という低ずり速度域で測定することが可能になった。
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