今後の研究の推進方策 |
(1)高効率の太陽電池材料としての構造物性及び光・電子物性の解明: ペロブスカイト構造特有の格子変形に係わる構造物性とそれに伴う電子格子相互作用に起因した光・電子物性を、単結晶X線回折実験、粉末中性子回折実験、ラマン散乱実験、分光実験等によって多角的に解明していく。具体的には、AGeX3 (A:Cs, CH3NH3、X:Br, I)の高品質単結晶を作製し、構造相転移、それに係る低温から高温までの構造安定性、Aサイトの有機分子の回転・配向状態の効果、フォノン寿命などを明らかにし、それらの知見を基に光・電子物性を議論していく。その上で、結晶安定性と太陽電池の高効率化への材料設計の指針を導き出す。 (2)有機と無機の複合効果の解明: 有機分子と無機八面体の相互作用に着目し、協同的複合効果と量子的複合効果を解明するために、前述のGe系の物性実験に加えて、A2AgInX6(A:Cs, CH3NH3、X:Br, I)へ圧力を印加し、有機部と無機部の相互作用を変化させて、有機分子の隠れた役割について検討する。具体的には、圧力印加による構造相転移、それに伴う電子構造(バンド構造)の変化を詳細に調べる。 (3)鉛フリーの高変換効率太陽電池のための物質探索: 4族元素(Ge, Sn)を用いたペロブスカイト半導体並びに金属カチオンに3族元素と5族元素を用いたダブルペロブスカイト半導体において、単結晶作製とその物性評価、並びに構造及び化学的安定を検証していく。それらの物質において逆型平面p-i-n構造の高品質薄膜太陽電池をco-additive技術などを活用して作製し、さらなる変換効率の向上を目指す(国立研究開発法人物質・材料研究機構太陽光発電材料グループのAshraful Islam 博士と協力)。同時に、光検出素子への応用も見据えてデバイス開発を進める。
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