Pb系、Sn系、Bi系ペロブスカイト太陽電池において、共添加エンジニアリングを活用して電力変換効率とデバイス安定性の向上を目指した。Pb系では、表面近傍に存在する未結合のPb2+欠陥を2つのβジケトンルイス塩基を添加剤に用いて化学的不動態化することにより、開放電圧と変換効率の向上、デバイス安定性の改善を実現した。Sn系では、ジアミノマレオニトリルルイス塩基を添加剤に用い、ペロブスカイト層から電子輸送層へ電子を効率良く引き抜くと共にペロブスカイト層の構造歪みの緩和とトラップ準位の減少を実現し、変換効率とデバイス安定性の飛躍的向上に成功した。Bi系では、CsBi3I10太陽電池の成膜条件の最適化等によって短絡電流の向上による変換効率の改善を実現した。 Ge系ペロブスカイト半導体において、4 K~300 Kの粉末中性子線回折測定を行い、四つの相(高温相α、室温相β、低温相γ、最低温相δ)の存在を明らかにした。β相からγ相への構造相転移では、GeI6八面体の連結に回転が生じ、さらに八面体が二種類のそれぞれ異なる方向に押し潰されて歪むことを明らかにした。この構造歪みと自由励起子との相互作用によって自己束縛励起子が形成されると解釈した。CH3NH3GeI3のβ相では、メチルアミン分子はCとNの位置がほぼ決まっているもののc軸方向を軸に不規則状態にあることがわかった。 ダブルペロブスカイト半導体Cs2AgInCl6において、高圧下のラマン散乱実験を行い、圧力誘起構造相転移の知見を深めた。また、4 Kから室温までのバンドギャップ変化と発光スペクトル変化を明らかにした。Cs2AgBiCl6では、Cuを添加した単結晶を作製した。光吸収、発光及びその励起スペクトルの結果から、Cuの不純物準位形成が示唆され、ラマン散乱測定ではその不純物準位との共鳴効果によるラマン散乱強度の変化を観測した。
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