研究課題/領域番号 |
18H01893
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
安野 嘉晃 筑波大学, 医学医療系, 教授 (10344871)
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研究分担者 |
巻田 修一 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (50533345)
三浦 雅博 東京医科大学, 医学部, 教授 (60199958)
大鹿 哲郎 筑波大学, 医学医療系, 教授 (90194133)
上野 勇太 筑波大学, 医学医療系, 講師 (90759317)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 光コヒーレンストモグラフィー / 光エラストグラフィー / 生体機械特性 / 複屈折計測 / 偏光顕微鏡 |
研究実績の概要 |
Jones matrix OCT elastography (JM-OCE) プロトタイプを作成し、ブタ摘出サンプルを用いた検証実験を行った。その中で、以下のような技術課題が見つかり、それに対する検討、対応を行った。 《面外変位量の解釈関する疑義と理解の修正》JM-OCE 計測は試料を 1 um 圧迫し、その前後に撮影したOCT断層画像を解析することで、深さ方向の微小変位マップ、断層画像面内横方向の変位マップ、面外変位マップを得る。このうち、面外変位マップは文字通り「断層面外方向への組織の変位量を反映している」と考えてきた。しかし、ブタ摘出組織サンプルの計測を繰り返す中で、その解釈では説明できない画像が多数得られることがわかった。そこで、この解釈を修正するため、まず、疑似計測試料を用いた装置性能の定量化実験を行った。これによって、このマップで現れている信号が計測のエラーに基づくものでないことを確認した。次に、組織圧迫時の組織変化の様子を検討することにより、次のように結論づけた。「従来面外変位マップと考えてきた画像には、組織の(光分解能以下の)微小構造の圧迫による変形がコーディングされている」。現在、この解釈に基づき、JM-OCT画像に最適化された画像処理、画像表示手法を開発中である。 《多重散乱の影響》上述の面外変位マップには、さらに未検討の性質があるように思われる。これは、組織の深い位置ほど面外変位が大きくなる、という画像の現れ方である。現在、これは組織による光の多重散乱に起因するアーチファクトではないかと推測している。この推測に基づき、OCT計測一般における多重散乱所の除去手法としてJM-OCEの装置構成を利用する可能性について検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画では「エラストグラフィー画像を得る装置を作成する」ことが2018年度の目標であった。本課題では、この2018年度目標は達成され、その上で、その検証実験、ヒストロジーとの比較を行った。また、さらに、この中でわかってきた画像解釈の問題を明確にし、それを解決する手法、および、それを積極的に利用したOCT技術そのものの改良手法の検討を開始している。以上のことより、本課題は当初の計画以上に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、以下の二点を中心に研究・開発を行う。 1) 《多コントラストの統合可視化手法の確立》JM-OCE顕微鏡で得られた組織の光学特性と機械特性を統合して可視化する手法の開発、および 2) 《生体活動性可視化手法の開発》生体における微小な活動性を可視化する手法の開発研究。 この内、(1)の統合可視化手法の確立では、まず、JM-OCE顕微鏡で得られる「生体の散乱係数(≒OCT信号の減衰係数)」、「複屈折特性」、「微小変形」を多次元特徴量としてとらえ、その多次元特徴空間において、層状の組織の特性が層をまたぐごとにどのように変化していくかを可視化する。この手法により、従来のように、一つの計測値(一次元特徴量)からは不明確であった組織の違いを明確に可視化することが可能になる。 (2) の「生体活動性手法」は、組織の同じ場所から多量の計測データを連続的に取得し、その時間変化特性を統計的に解析することで組織の活動成果可視化する手法を開発する。現時点では、この統計的な手法として次のものを考えている。(i) 時系列データのフーリエ周波数解析による変化スペクトルの特性解析。(ii) 時系列データの空間パターンの時間相関を解析することによる活動性の可視化。(iii) 空間パターンの時間パターンの時間相関を解析することによる活動性の可視化。※ (ii) の手法は(iii)の手法に比して高い時間分解能を持つものの、空間分解能に劣る。また、計算処理時間は (iii) の手法が (ii) に比して圧倒的に短い(原理的に処理の高速化が可能である)と考える。本課題では、これらの特性を考慮しつつ、実際の応用面でどの手法が優れているかを比較・検討する。
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