研究課題/領域番号 |
18H01897
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
荒川 太郎 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 准教授 (40293170)
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研究分担者 |
吉川 信行 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 教授 (70202398)
國分 泰雄 中部大学, その他の部局, 副学長 (60134839)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 光変調器 / 極低温 / 微小リング共振器 / 半導体 / 超伝導 |
研究実績の概要 |
今年度は,極低温(4.4 K)における半導体ポテンシャル量子井戸の設計と屈折率変化特性の構造の更なる最適化の理論検討を行った。昨年度は光源である半導体レーザを同時に極低温まで冷却し、波長1.45ミクロンでの動作を想定していたが、今回は、極低温系の外部に設けた半導体レーザ光源を想定し、温度4.2 Kにおいて1.55ミクロン波長帯で動作する五層非対称結合量子井戸構造を検討した。その結果、本波長帯においても、微小リング共振器装荷マッハ・ツェンダー干渉計と組み合わせることで、0.42 mVという極めて低い電圧で動作可能な光変調器の実現が可能であることを理論的に示した。量子井戸構造に設計には、独自開発したシュレディンガー方程式解析用のシミュレータを用いた。デバイス構造の設計には、ビーム伝搬法(BPM)および時間領域差分(FDTD)法を用いた。ただし、変調器単体では動作周波数が2.2 GHzと高速ではないので、微小リング共振器を複数装荷して波長多重通信が必須となることもわかった。 並行して、温度4.2 Kにおける光学特性の測定系について引続き検討した。紫外線硬化接着剤を用いて試料に光ファイバを固定して半導体微小リング共振器の導波測定をする、およびpn接合の電圧電流特性を測定することにしかし、温度変化による光ファイバ固定位置のずれによって測定ができなくなる場合も多く生じた。そこで、回折格子結合型カプラを用いた光ファイバとの結合を検討し、専用治具を開発した。これにより、光ファイバ固定位置のずれに対する耐性の大きい測定が可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度,五層非対称結合量子井戸構造の設計はほぼ終え,また、極低温での半導体光導波路への導波実験にも成功した。さらに光ファイバと回折格子結合型カプラを通した結合の見通しが立ったので、概ね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
第2年度の研究において,今年度,五層非対称結合量子井戸構造の設計はほぼ終え,また、極低温での半導体光導波路への導波実験にも成功した。さらに光ファイバと回折格子結合型カプラを通した結合の準備が整った。 次年度は、さらに半導体光導波路デバイスの光透過特性の測定を進める。具体的には、昨年度新たに開発・作製した光ファイバ保持治具を用いて、液体窒素中(77 K)および液体ヘリウム(4.2K)中での回折格子結合型カプラと通したデバイスおよび光ファイバの光結合を行う。グレーティングカプラを有するInP系光導波路およびシリコン光導波路を作製する。回折格子結合型カプラを用いることにより、低温での光軸ずれ耐性が向上すると期待される。これを用いて両者の結合特性の評価を行う。さらに、低温におけるシリコンおよび化合物半導体光導波路の光透過特性の評価を行う。 並行して、昨年度設計を行ったポテンシャル制御量子井戸をコア層に有するマッハ・ツェンダー光変調器用エピウエハを結晶成長し、デバイスの作製を行う。結晶成長には分子線エピタキシー法を用いる。デバイス作製には、電子ビーム描画法および誘導結合プラズマ反応性イオンエッチング法を用い、光導波路および電極の形成、加工を行う。作製したデバイスを極低温下で測定し、電界誘起屈折率変化特性を評価し、設計にフィードバックする。デバイス設計には、ビーム伝搬法(BPM)、有限差分時間領域法(FDTD)を用いる。
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