中赤外波長域の超広帯域コヒーレント光パルスを発生できる高出力・高効率・コンパクトなレーザー光源を開発することを目的として研究を行った。独自に開発した波長2.8μmの中赤外ファイバーレーザーを励起光源とする4~5μm帯の高出力フェムト秒レーザーを開発することで、中赤外域の広帯域光源技術の確立を目指した。Fe:ZnSe結晶は、4~5μmの幅広い波長域で利得が得られるため、中赤外域のフェムト秒レーザー媒質として期待されている。一方、代表者らが開発したファイバーレーザーは安定性、信頼性、効率、出力、ビーム品質など多くの点で優れており、Fe:ZnSeレーザーの励起光源として理想的な特徴を有している。本研究では、ファイバーレーザー励起Fe:ZnSeレーザーの技術を確立するべく、実証実験を実施した。主な研究実績は以下の通りである。(1) ファイバーレーザー励起Fe:ZnSeレーザー発振器を世界で初めて開発し、高出力・高効率レーザー発振をコンパクトな装置で実現した。(2) QスイッチFe:ZnSeレーザー発振器を開発し、微細加工へと応用可能な高繰返し・高ピークパワーレーザー発振を実証した。(3) グラフェンを利用したモード同期Fe:ZnSeレーザー発振器を開発し、世界で初めてフェムト秒パルスの発生を実証した。上記の成果により、多方面へ応用可能な、高出力・高効率・コンパクトな中赤外フェムト秒レーザーの実現の見通しが得られた。
|