研究課題/領域番号 |
18H01903
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
岡本 晃一 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50467453)
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研究分担者 |
藤田 静雄 京都大学, 工学研究科, 教授 (20135536)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | プラズモニクス / 深紫外 / 酸化物半導体 / 発光素子 / 量子構造 |
研究実績の概要 |
(1). 酸化物半導体量子構造の作製・評価 京都大学において、ミストCVD装置を用いて、井戸幅1nm以下の酸化物半導体の極薄多重量子井戸を作製した。既存の電子線励起の深紫外発光評価装置を用いて、作製した試料の深紫外発光特性を評価した。超ワイドギャップ酸化物半導体においては、極低温下で高効率な発光を観測することができたが、その発光強度は室温下では著しく低下してしまうことが分かった。 (2).プレキシトンの制御 大阪府立大学において、深紫外波長域におけるプレキシトンの効果を最大限発揮するために、電磁場解析シミュレーション、金属ナノ構造の作製、光学特性評価を行った。特にAlナノ微粒子/誘電体スペーサー/Al薄膜基板のサンドイッチ構造を用いて、非常に急峻で強いピークが出現し、誘電体スペーサーの膜厚によってフレキシブルに制御可能であることを見出した。実際の作製においては、薄膜を加熱することによってAlナノ微粒子構造をきれいに高密度に作製することが非常に困難であることがわかった。そこで新たに作製が容易なAgナノ微粒子とAlナノヴォイド構造によって、同様の強い共鳴ピークが深紫外波長域に得られることが計算と実験の両方からわかった。 (3).深紫外発光特性評価 大阪府立大学においてLDLS白色光源を用いた深紫外発光評価装置を立ち上げ、AlGaN/AlNの深紫外発光スペクトルの測定に成功し、Al薄膜によって発光が増強することも確認できた。しかしAlナノ微粒子/誘電体スペーサー/Al薄膜構造を半導体量子井戸の上に作製することは非常に困難であることがわかった。また同様の手法を用いて超ワイドギャップ酸化物半導体の深紫外発光の観測を試みたが、これについてもまだ成功していない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1). 酸化物半導体量子構造の作製・評価 目的としていた、強い深紫外発光特性をもつ酸化物半導体の極薄多重量子井戸の作製に成功し、極低温においては従来の結果をはるかに上回る発光強度が得られたので、概ね計画通りに順調に進んでいると考えられる。しかし現時点では室温下では著しく発光が低下してしまうので、さらなる改善の必要性はある。 (2).プレキシトンの制御 電磁場解析シミュレーションにより非常に急峻で強いピークが出現刷る構造を最適化することができた。一部の構造は実際に作製することが困難なものもあったが、AgとAlの二種類の金属種、ナノ微粒子とナノヴォイドの二種対のナノ構造をうまく組み合わせることによって、深紫外発光波長域のみならず近赤外発光波長域にも大きな共鳴スペクトルを得ることに成功した。よってこれについても概ね計画通りに順調に進んでいる。次に(1)で作製した酸化物半導体の極薄多重量子井戸に最適化した金属ナノ構造を作製し、実際の深紫外発光の高効率化を目指す。これについては強い発光特性をもつ窒化物半導体を用いてある程度成功しているが、超ワイドギャップ酸化物半導体については今後の課題である。 (3).深紫外発光特性評価 LDLS白色光源を用いた深紫外発光評価装置の立ち上げ、窒化物半導体の深紫外発光スペクトルの測定には成功しており、概ね計画通りに順調に進んでいる。現時点では超ワイドギャップ酸化物半導体の深紫外発光の観測にはまだ成功していないが、今後クライオスタットによる極低温測定との組み合わせることによって観測可能になると考えている。また他のグループが所有する深紫外パルスレーザーシステムや、軌道放射光システムを共同研究によって用いることも検討している。
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今後の研究の推進方策 |
(1). 酸化物半導体量子構造の作製・評価 極薄多重量子井戸を引き続き作製する。サファイア基板上への高品質の超格子バッファ層の導入し、量子井戸構造の更なる高品質化を目指す。複数のキャリアガスの流量を並列制御することにより、より周期性の優れた多重量子井戸構造を作成する。電子線励起の深紫外発光評価装置を用いて、作製した試料の深紫外発光特性を評価し、その結果をフィードバックさせ、さらなる高品質化を図る。 (2).プレキシトンの制御 電磁場解析シミュレーション、金属ナノ構造の作製、光学特性評価を引き続き行う。大阪府立大学に現存の高真空RFスパッタに加えて、昨年本予算の前倒し利用によって新たに導入した原子層堆積(ALD)装置を駆使して、計算で得られたスペクトルの再現を目指す。現存の原子間力顕微鏡によるナノ形状測定を行い、各ナノ構造について計算と実験の結果を比較することによって、金属ナノ構造による多重量子井戸のプレキシトンの制御を試みる。 (3).深紫外発光特性評価 電子線励起による深紫外発光評価装置とLDLS白色光源を用いた深紫外発光評価装置を用いて、深紫外発光スペクトル測定を測定し、それによって高効率化の機構を詳細に解明し、それをフィードバックさせて量子井戸の構造、成長条件の最適化を図り、量子準位間の発光が可能な高品質多重量子井戸を実現する。また大阪府立大学で既存のチップエンハンス近接場光学顕微分光システムを深紫外対応に改良し、発光スペクトルのナノ空間分布光測定によって発光機構の空間ダイナミクスを解明し、材料作製、金属ナノ構造最適化にフィードバックさせる。上記のプロセスにより波長200nm付近の高効率発光材料、発光素子の開発を進める
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