研究課題/領域番号 |
18H01912
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
斉藤 拓巳 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (90436543)
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研究分担者 |
渡辺 勇輔 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 核燃料・バックエンド研究開発部門 東濃地科学センター, 研究職 (30808647)
宮川 和也 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 核燃料・バックエンド研究開発部門 幌延深地層研究センター, 研究職 (90721225)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 天然有機物 / 深部地下環境 / 核種移行 |
研究実績の概要 |
日本原子力研究開発機構幌延深地層研究センター,および,同瑞浪超深地層研究所設で得られた地下水試料や表層の沢水試料を取得した.また,一部,同深部地下研究所の岩石コア試料から,天然有機物(NOM)を,その構成成分の組成を保持させたまま,濃縮,抽出した(フェーズ1).そして,得られた試料の化学構造や分光学的特性を3次元蛍光分光測定を用いて評価し,多変量解析手法の一種であるPARAFACを用いて,試料間に共通する蛍光成分の励起-発光マトリクス(EEM)を抽出し,グループ化するとともに,その起源や地質環境パラメータとの相関を調べた(フェーズ2). フェーズ1の成果としては,2箇所の地下研より,計40試料の地下水を採取した.また,幌延深地層研究センターでは,表層の沢水試料と異なる深度の岩石コアを取得した.そして,同地下研の岩石コアからNOMを抽出した. フェーズ2では,3次元蛍光分光によるEEM測定を行い,PARAFACによる多変量解析を実施し,瑞浪試料地下水については5成分,幌延地下水については4成分,岩石コアNOMについては5成分の蛍光成分を分離した.さらに,これらの蛍光成分の濃度とサンプリング深度や地下水の地球化学パラメータとの相関を調べるとともに,EEMのデータベースであるOpenFluorを用いた類似性評価から,EEMの起源を検討した.その結果,瑞浪地下水に関しては,表層の腐植物質と類似した蛍光成分が深度,塩化物イオン濃度と共に減少し,一部分解を受けている可能性が示唆された.また,幌延地下水では,分離された蛍光成分が深度や地下水の化学パラメータに依存しないことが分かった.また,両地下水において,特定の採水位置に固有の表層NOMとは異なる蛍光成分の存在や微生物活動に由来した生体高分子に係る蛍光成分の存在が示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた,フェーズ1における地下水試料の採取や岩石コアからの有機物の抽出を実施している.また,フェーズ2として,地下水や岩石コアに含まれているNOMの化学構造や分光学的性質を3次元蛍光測定を用いて評価すると共に,多変量解析手法の一種であるPARAFACを用いて,データセット中に含まれる共通的な蛍光成分を分離できた.また,地下環境パラメータとの相関やデータベースとの比較を通して,それらの蛍光成分の起源や性質を議論できている.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,前年度までに取得した深部地下水中のNOM,あるいは,その濃縮・抽出溶液を濃度が5 mg/L程度になるようNaCl溶液で希釈し,放射性廃棄物処分の安全評価において重要となる放射性核種,あるいは,その模擬元素を添加し,試料のpHを実環境に即したpHに調整する.また,地下環境中における重要な配位子である炭酸イオンを含む同様の試料も作成する.ここで,添加する元素としては,ユーロピウム(核分裂生成物,また,Am3+等の3価アクチノイドの模擬),ジルコニウム(核分裂生成物,また,Pu4+,U4+などの4価アクチノイドの模擬),ウラン(6価,UO22+)を想定している.添加濃度については,加水分解等による沈殿生成を避け,NOMの官能基濃度に対して十分小さな値となるよう,事前に熱力学計算を行い,決定する.模擬核種の動態評価には,3次元蛍光分光測定を用いた消光測定や申請者が開発を進めているFFFと誘導結合プラズマ質量分析をオンラインで接続し,試料のNOMサイズ分布と添加した核種のサイズ分布を同時決定する手法(FFF-ICPMS)に加えて,サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)やキャピラリー電気泳動(CE)とICPMSを組み合わせた手法も用い,NOMへの核種の結合量を評価する.そして,得られた結果をまとめて,PARAFAC法などの多変量解析手法を援用することで,核種の動態に対する深部地下NOMの影響とNOMの種類,地質パラメータとの関係を整理する.
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