研究課題
申請者らは照射その場観察法等により金属材料の強化因子であるナノ粒子の不安定化や過飽和溶質原子の析出など、新たな照射誘起型固相反応現象を見出してきた。これは、照射環境においてプラント構造材料の強度劣化につながる可能性があり、原子炉構造材料や原子燃料被覆管材料、核融合炉構造材料の健全性評価にとって重要な現象となり得る。本研究では、鉄鋼およびZr合金中の材料強化因子に対する照射影響を組織-強度相関の視点で調査し、水素化の重畳効果を実験的に検出し、原子炉内と炉外における材料劣化を比較し、照射・水素化重畳影響を評価することとした。鉄鋼中の酸化物ナノ粒子の照射下挙動解明のため、照射下その場観察実験により酸化物微粒子は成長と収縮をランダムに繰り返し、長期的に収縮、消滅の途をたどることを確認した。このランダムなサイズ変化の過程が照射の初期に典型的な事象であることを見出し、結晶成長の古典論であるオストワルド成長理論を適用した検討を行い、nm程度のサイズや結晶性を考慮した修正が必要であることを指摘した。この現象が機械強度に対して及ぼす影響についても、ナノ硬度測定と電子後方散乱回折(EBSD)を組み合わせた独自性の高い手法を開発して明らかにすることに成功した。本件は、Journal of Nuclear Materials誌において表彰を受けた。次に、Zr合金を対象として照射-水素重畳効果の測定を行った。水素約100ppm注入材では照射軟化が生じ、注入量の増加に伴い照射硬化が顕在化することを見出した。さらに照射組織発達過程に対する水素の影響を明らかにした。この成果は原子力学会にて優秀学生発表として表彰された。また、管形状材料の機械強度に対する水素影響を明らかにした。Zr金属の酸化被膜表面における水素発生挙動に対し照射加速効果があることを確認した。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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