研究実績の概要 |
合理的で安全性の高い核燃料サイクルを実現するには効率的な核種分離が欠かせない。しかし汎用的分離法には、操作の複雑さ、二次廃棄物生成、爆発等の懸念といった問題があり、新しい分離技術の確立が望まれる。そこで本研究では、比界面積や物質の輸送効率が極めて大きい数10 nm~ 数100 umのマイクロ・ナノ流路内で、超臨界二酸化炭素(scCO2)を反応媒体として希少金属元素を分離回収しうる“超臨界マイクロ流体化学システム”の技術と方法論を創成することを目的としている。 本年度には、これまで確立した手法で作製したマイクロ流路及びマイクロチューブ内に、金属元素を含む水相と抽出剤を含むscCO2相とを導入し、マイクロプラグ流による金属イオンの溶媒抽出試験を実施した。金属イオンにはLi,Cs,Sr等のアルカリ・アルカリ土類、Pd等の白金族類、Se等のオキソ酸、ランタノイド及びアクチノイドとしてウランを用い、水溶液の硝酸濃度は0~3Mで調整した。また、scCO2相には、それぞれに対応する抽出剤(クラウンエーテル化合物、チオ尿素系化合物、ナフタレン化合物、ジグリコールアミド及びリン酸トリブチル)を溶解させて使用した。scCO2相の温度と圧力はそれぞれ40℃と25MPaとした。水/scCO2抽出後、流路出口に設置した減圧弁を開放することで、水相を回収し、水相中の各金属元素の濃度をICP-MSにて定量し、抽出率を算出した。その結果、Pd2+イオン、[Se(IV)O3]2-イオン、3価ランタノイドイオン、[U(VI)O2]2+イオンは80~100%抽出できることを見出した。一方、Cs+イオンやSr2+イオンは最大20%程度しか抽出されず、クラウンエーテル化合物のscCO2相への溶解性が不足していることが示唆された。抽出剤の調整が今後の課題になると言える。
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