本研究では、比界面積や物質の輸送効率が極めて大きい数10 nm~ 数100 umのマイクロ・ナノ流路内で、超臨界二酸化炭素(scCO2)を反応媒体として希少金属元素を分離回収しうる“超臨界マイクロ流体化学システム”の技術と方法論を創成することを目的としている。具体的には、流路の形状・性状が異なるマイクロ流路でscCO2/水セグメント流を形成させ、そのscCO2/水界面で標的金属元素の抽出を行う。また、抽出後のscCO2相を出口部にてCO2ガスと抽出錯体を分離することで、無廃棄物分離回収を実証することを目的とする。 本年度には、作製したマイクロ流路内に、高圧送液ポンプを用いて、ランタノイドやアクチノイド等の金属イオンを溶解させた硝酸水溶液(0 - 5 M)とTetraoctyl diglycolamide (TODGA)等の抽出剤を含むscCO2相とを同時に導入し、水/scCO2のマイクロプラグ流を形成させ、金属イオンの溶媒抽出試験を実施した。カウンターイオンにはフッ素化合物perfluorocarboxylic ion(PFOA-)を添加した。温度は40℃、圧力を15~25MPaの範囲で調整することで、液液接触時間を制御した。出口部の減圧弁及び油水セパレーターを通して回収した水相中をICP-MS、有機相をUV-Visにて測定し、各金属イオンの濃度を定量すると共に、抽出率を算出した。その結果、接触時間30秒ほどで、ランタノイドやアクチノイドのみならず、ジルコニウムやパラジウムもほぼ100%抽出できる条件が存在することが分かった。有機溶媒を使用することなく、反応溶液を減圧回収することができ、また、反応自体も秒スケールで完了することから、開発した超臨界マイクロ流体化学分離システムは、既存のバルク法に比して、低環境負荷かつ高効率な分離法であると言える。
|