研究課題/領域番号 |
18H01917
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
日野 正裕 京都大学, 複合原子力科学研究所, 准教授 (70314292)
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研究分担者 |
細畠 拓也 国立研究開発法人理化学研究所, 光量子工学研究センター, 研究員 (00733411)
山形 豊 国立研究開発法人理化学研究所, 光量子工学研究センター, チームリーダー (70261203)
小田 達郎 京都大学, 複合原子力科学研究所, 助教 (70782308)
吉永 尚生 京都大学, 複合原子力科学研究所, 技術職員 (90795535)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 中性子光学 / 多層膜 / 低速中性子集光 / 多層膜ミラーシート |
研究実績の概要 |
中性子科学の飛躍的な向上に寄与する新中性子集光デバイスを生み出し、低速中性子制御の新手法を打ち立てることを目指す。
具体的には、中性子反射性能を持つ多層膜だけで構成された自立膜(多層膜中性子ミラーシート)を多重に形状制御し、今までにない強集光デバイス開発を行う。結晶では実現不可能なワイドバンドで世界最高の反射性能を持つ多層膜中性子ミラーシートを開発し、精密加工技術の知見を活かして形状制御を行い、強集光デバイスの製作手法確立と集光特性の定量評価、利用展開を目指す。
まず平面シートから曲面を構築することで、集光デバイスの製作スピードの飛躍的な向上が期待した。ただ、形状精度良くかつ安定的に集光デバイスを構築することは難航している。一方、近年では金属を用いてもサブナノメートルレベルの非球面鏡面マンドリル(mandrel)が製作でき、その製作スピードとコストも中性子ミラー製作に十分に利用可能なレベルとなりつつある。また形状精度が高く、つなぎ目もほとんどなく集光ミラーが再現性良く製作することを目指して、凸型の鏡面マンドリルから多層膜ミラーシートを転写する手法についても開発を行った。多層膜ミラーシートの剥離や多層膜ミラー自体の中性子反射性能の改善に対して得られた知見は、この製作方針をサポートするものであった。そこで最大Φ130mm、長さ250mmまでの凸型鏡面マンドリルを設置して多層膜成膜可能な治具を製作し、成膜条件の探索を行っている。また多層膜ミラーシートの大面積化、反射性能向上及び膜応力の制御を行うための中間層材質の開発を行った。。またこれらの知見は、高臨界角偏極スーパーミラーや新たな中性子デバイス開発展開にもつながっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
結晶では実現不可能なワイドバンドで世界最高の反射性能を持つ多層膜中性子ミラーシートの構築は進んでおり、局面への成膜、剥離条件の探索等も進んでいるが、最終研磨を行ったマンドリルは2020年度上旬完成予定であり、集光デバイスの構築がやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
結晶では実現不可能でかつワイドバンド中性子ミラーをめざした平均の面間隔3nmでの多層膜ミラーシート多重化したものの反射率測定を行う。2019年度に開発したマンドリルの精密研磨を行い、回転楕円状の多層膜スーパーミラーシートを構築する。そしてこれを用いた中性子集光実験を行い、その性能を評価する。ここでは近年我々が製作に成功した金属母材による凹型の回転楕円体スーパーミラーとの比較も行いたい。
集光デバイスの中性子実験は、J-PARC MLF BL06(VIN ROSE)ビームラインや京大複合研のCN-3ビームラインを中心に行う。そして、VIN ROSEへの利用をはじめ、京大複合研、J-PARC等様々な中性子ビーム利用施設での利用展開を検討していく。
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