研究課題/領域番号 |
18H01921
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
元川 竜平 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 物質科学研究センター, 研究主幹 (50414579)
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研究分担者 |
金子 耕士 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 物質科学研究センター, 研究主幹 (30370381)
永井 崇之 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 核燃料・バックエンド研究開発部門 核燃料サイクル工学研究所 再処理廃止措置技術開発センター, 研究主幹 (70421469)
小林 大志 京都大学, 工学研究科, 准教授 (80630269)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ガラス固化体 / 中性子小角散乱 / ナノ構造 |
研究実績の概要 |
ガラス固化体の製造に供するガラス原料(ホウケイ酸ガラス)の製作において、ZnO/CaO及びLi2Oは分相抑制の効果とガラスの融点降下を促す添加剤として汎用的に用いられている。ところが、これらの添加剤がホウケイ酸ガラスのナノ構造に与える影響は明らかにされていない。そこで、中性子小角散乱法を用いてナノ構造を直接観察した。まず、Al2O3/CaO/ZnO/Na2Oを添加したホウケイ酸ガラスに対して、3.6 wt%のLi2Oを添加した試料と、Li2Oを添加しない2種類のガラス試料を作製した。作製手順は、アルミナルツボに入れた原料粉末を大気雰囲気で1150度に加熱して2.5 h保持した。その後、溶融ガラスを黒鉛モールドへ流し込み510度で2時間保持してから室温まで徐冷した。作製したガラス試料を直径30 mm, 厚さ0.5 mmに加工し、中性子小角散乱測定の試料とした。その結果、2つの試料はどちらも約7 wt%のZnO/CaOを含むが、Li2Oを添加しない試料でのみショルダーピークが観測されたことから数ナノの空孔がガラス中に形成されることがわかる。本来、ZnO/CaOは分相抑制を期待して添加されるが、ナノスケールでは不均一を形成する方向に作用することがわかった。その一方、ZnO/CaOと同時にLi2Oを加えるとこのショルダーピークは観測されないため、ナノ構造体は形成されないことも明らかにできた。ZnO/CaOの添加は数ナノのドメインをガラス内部に生成させるが、Li2Oを同時に添加するとドメインの生成が抑制されることが確認された。また、平成31年度は中性子イメージング分析装置を利用した中性子透過ブラッグエッジ法を模擬ガラス固化体の構造解析に用いるための準備を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の見通しに沿って種々の中性子散乱法を利用した様々な構造解析を実施している。特に、原料ガラスの微視的構造について新しい知見を得ることができている。
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今後の研究の推進方策 |
模擬廃液を含むガラス固化試料についての中性子透過ブラッグエッジ・イメージングを用いた分析を行うことで、モリブデン酸塩化合物や白金族金属の析出とそれに伴う空間分布についての検討を行う。特に、原料ガラス原料の性質との相関関係を明らかにすることを目指す。同時に、試料によっては中性子共鳴イメージング測定の利用も考える。また、X線や中性子回折測定を併用することで模擬廃液含有ガラス固化体中で結晶化する成分やガラスネットワークの構造解析を視野に入れた実験を進める。昨年度までの研究で、中性子回折ではガラスネットワークの構造、X線回折では析出物(白金族金属の酸化物など)の構造由来のデータが得られることがわかっているため、この特性を活かした構造解析を実施する。
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