研究課題
ガラス固化体の研究では、X線回折によるガラスのハローパターンの確認や、ガラス内部の析出物に起因したブラッグピークの有無が主に注目され、詳細な構造解析は行われてこなかった。その一方で、散乱体に対して異なるコントラストを持つX線と中性子を組み合わせることでより多くの情報が得られることが期待される。特に、これまで実施されていない中性子線を用いることで、非破壊のまま試料の内部まで析出物の有無を調べることが可能となる他、ガラスの構造についても情報が得られることが期待される。そこで我々は、中性子回折によるガラス固化体試料分析の有用性を検証することを目的として実験条件等についての検討を進めた。ガラス組成の違いにより、主に4つの散乱角領域でピーク位置、及びその強度に違いが見られた。最も低角の20度付近では、ショルダーピークの明瞭さ、及びピーク位置に僅かなシフトが見られ、配位距離が変化していること、またその距離に分布が現れていることが分かった。一方、80度付近では主に回折強度が大きく変化していることから、ケイ素原子やホウ素原子の配位元素が大きく変化していることが考えられる。但し天然ホウ素を含むホウケイ酸ガラス系の試料では、吸収補正による影響が大きく、定量的な解析が困難であるため将来的に吸収の少ない同位体11Bを用いた試料についての評価を行うことが求められる。これらのガラス試料の中性子回折では、11B置換試料を用いることで、より詳細な構造情報が得られることが期待される。総じて、当初の目論見通りの広角散乱の有用性が確認された。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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Journal of Non-Crystalline Solids
巻: 578 ページ: 121352-121358
10.1016/j.jnoncrysol.2021.121352