研究課題/領域番号 |
18H01922
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
宮部 昌文 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 福島研究開発部門 福島研究開発拠点 廃炉国際共同研究センター, 研究主幹 (20354863)
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研究分担者 |
長谷川 秀一 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (90262047)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | レーザー分光 / レーザーアブレーション / ドップラーフリー分光 / 遠隔分析 / 同位体分析 / 原子・分子物理 |
研究実績の概要 |
福島第一原子力発電所の廃炉作業で必要となる、燃料デブリの検出や、再臨界防止のための核燃料物質などの定量、強い放射性物質の組成分析では、アブレーション共鳴分光法が有用と考えられるが、同位体シフトの小さな難分析核種ではより高い分解能を得ることが求められる。本研究では、レーザープラズマ中の原子に対する様々なドップラーフリー分光法の実証を行ない、本分析手法の核種分析への適用性を示し、実験手法や実験条件を明らかにすることが主な目的である。 平成30年度は、ドップラーフリー分光で必要となる高出力連続発振・波長可変レーザー光源として、テーパー型アンプ用LD素子とECDLを組み合わせた高出力レーザー光源を設計・製作し、その光出力特性を評価した。その結果、①中心波長付近では、オシレーター出力の約5~10倍のアンプ出力が得られることや、②1時間の出力変動が±2%以下と安定であること、③単一縦モードを維持したままスキャンできる周波数範囲が数10GHz以上と広いことなど、分光に十分利用できる性能であることが確かめられた。また、分光手法の実証試験では、2本の波長可変レーザー光を対向してSrのアブレーションプラズマに照射することで、両方の光を同時に吸収する原子から発生する共鳴蛍光を、カメラを使って2次元観察することに成功した。これによって、レーザープラズマ中の2段階共鳴励起原子による共鳴分光を実証するとともに、その信号観測に適した実験条件を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度は3年間の研究計画の初年度であり、ドップラーフリー分光の検出感度のポイントとなる高出力波長可変半導体レーザーの開発が主な目的である。テーパーアンプ型レーザー素子に、外部共振器半導体レーザーからのオシレーター光を精密に導入することで、長時間安定な光出力の得られるレーザー光源が製作でき、分光試験への供用を開始することができた。このため、当初は低出力レーザーのみで行えるドップラーフリー飽和吸収分光の実証を初年度に予定していたが、高出力レーザーを対向して照射することで可能となるドップラーフリー蛍光分光の実証を先行させ、実際にアブレーションプルーム中のSr原子の2段階共鳴蛍光信号を観測することに成功した。このため本研究は、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度は、製作した高出力半導体レーザーに能動的な波長安定化制御機能を付加するため、エタロン干渉計や波長安定化ヘリウムネオンレーザーを用いた光源の波長制御システムを開発する。これによってより正確なスペクトル幅の計測を実現する。さらにその波長制御システムを用いて、原理実証に用いたSrに加えて、核燃料物質に近い光学的性質を持つランタノイド元素や原子炉材料に多く含まれるZrやCaなどでドップラーフリー共鳴蛍光・吸収スペクトルの計測に試みる。
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